水の精霊と癒しの魔法
「ルミナス」
コンコンとノックするのは彼の家から少し離れたところにあるお家。ここがルミナスの家なのかな?
赤い屋根、緑色の蔦が壁を這っている。
「はーい、って、あれ? 今日は二人で出かける日じゃなかったっけ?」
着替えをすませた私は、またアルテにおんぶされていた。
「リリーナが足挫いたみたいなんだ。診てくれないか?」
ルミナスは少し慌てた素振りをしていた。
「あ、すまん。今日だったか」
「いえ、大丈夫です」
ルミナスのいる場所の奥から、女の子の声がした。
「ルミナス様、終わりましたら、また、まいります」
ぺこりと白い大きな帽子を被った金色の髪の女の子がお辞儀をして私達の横を通り抜け、街へと消えていった。
帽子で隠れて顔は見えなかったけれど、どこかで嗅いだようなとてもいい香りがした。
流行りの香水なのかな? どこかのお嬢様? またくるってことはまさか、ルミナスの?!
「とっとと終わらせないとだな」
「はい」
聞きたい! 聞きたいけど、空気を読まないとですね!
私達はルミナスの家にお邪魔した。
「ウィンディーネ」
また、お世話になります! ウィンディーネちゃん。
「ありがとうございます」
小さな精霊さんとルミナスにお礼を言うと、二人はそろってにこりと笑顔になった。
「便利ですね。
だから、ヒーリングが使える攻略キャラ達がいないと、サブコンテンツも難しかったりするのよね。
主人公はヒーリングが使えなかったから。もちろん、私の使う魔法にもヒーリングはない。
「ウィンディーネも契約してみますか?」
「え、いいんですか!」
治った足でひょいとルミナスに近づく。
おっと、もしかしたら彼女さんがいるかもだった。
私は少しだけ後ろに戻る。
「シルフとなら精霊同士の相性は悪くないのでたぶん大丈夫でしょう」
ルミナスはカタリと立ち上がって、棚に石を取りに行くみたいだ。ここにもあるんだ。
「あの、でもホントにいいんですか?」
慌てながら聞くと、ルミナスとアルテが笑いながら「いいんじゃないかな」「いいんじゃないか?」と、言っていた。
大盤振る舞いだ! よーし、今度は気をつけないと。前回の感じならさっきみたいなウィンディーネちゃんを考えればいいのよね。
「じゃあ、いきますよ」
水色の紋を描いてもらって、水色の石を用意したルミナスが言う。
「はい!」
(みず! 水! ウォーター!)
ポンッと現れた精霊の顔は…………私だった!
なんでだ!?
プククとルミナスが笑っている。
「あー、えっと? 私、ルミナスのウィンディーネちゃんを想像してたんだけど、どうしてでしょう?」
「さぁ?」
プククと笑い続けるルミナスは何故か、私の後ろを見ている。
「アルテは何でか、わかる?」
振り返り、後ろに立って肩に手を置いていたアルテを見た。すると彼は、顔を向こうに向けていた。
「っくく、――まあ、可愛いじゃないですか。このまま契約しましょう」
「はぁ……」
なんだろう。自分の顔そっくりの精霊と、アルテそっくりの精霊を使役することになるとは……。
笑いすぎて、ルミナスの目から涙がこぼれていた。
「よろしくね、ウィンディーネちゃん」
水の精霊はこくりと頷くと姿を消した。
「上手くいったね」
「――あぁ」
「何のことですか?」
「気にしなくていいよ」
二人が謎の会話を交わして勝手に納得していたけれど、この時の私にはまったく意味がわからなかった。
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