想定外に役に立つことも在る
「すまない。まさかあのメイドも加担しているとは思っていなかった。大丈夫だったか?」
「大丈夫ですよ。あの程度でしたらリースに似たようなことを何度かされたことがありますし」
お風呂に入っている間に出入り口を封鎖されたり、朝起きたら部屋から出られなくなっていたりと、最初の内は驚いて焦っていたのですけど、何度もされていると慣れる物です。
まあ、最近はリースが学院に通っていたので、そういったことも最近は無くなっていたのですけれど。
「いや、それとこれとは違うだろう」
「そんなに変わらないと思います。どちらも私と言うか、上の者の指示に従っていない上に話が通じませんし」
話が通じないといいますか聞く気が無いのならそれほど違いはないと思います。確かに悪戯なり嫌がらせの程度が違ったり、関わっている人の数が違ったりなどはありますが、少なくとも相手がこちらに敵意なり害意を持っているのには変わりがないのですから。
「しかし、このままという訳にはいかない。君を危険な目に合わせたくはないのだ」
「っ! そ……そう言っていただけるのは大変嬉しく思うのですが、どうするおつもりで?」
悲しそうながら優しい表情をしたアグルス様に見つめられて戸惑いながらも言葉を返します。
「残念ながら直ぐに如何にかできるような案は思いつかない。少なくとも馬車の中で言ったように夕食の場で使用人に牽制する事しか現状は出来ない。安易に使用人を解雇すると悪評が立ちかねないからな。少なくとも主犯が本性を現すまでは安易に動くことは出来ない」
「主犯……執事長ですか」
「む。よくわかったな。あれとはまだ数回しか対峙していなかったと記憶しているのだが」
どうやら私が執事長のことに気付いているとは想定していなかったようで、アグルス様は少しだけ驚いた表情を私に向けています。
「先ほど会った時に、リースの関係者と同じような、あまりよろしくない目をしていたので」
「なるほどな」
「意外とあの子の行動は役に立っているようです。昔は面倒以外には思わなかったのですけれど」
「何事もことが起きなければ役に立つかどうかはわからないものだ」
「そうですね」
本当に何が役に立つかはその場になってみないとわからないですよね。逆に役に立つと思って覚えたことが一切役に立たない、なんてこともありますし。
「とりあえずは夕食後の事だが、暫くはこの状況で過ごしてもらうことになる。出来る限り早く、我が家の膿を出すつもりでいるが今すぐにというのは難しい」
「ええ、それは承知しています」
すぐに改善するようなことならこのような状態にはなっていないでしょうからね。それに、こういった状況がそう簡単にどうにかできることではない事は、リースの経験でわかっている事です。
「ああ、そうだ。本来なら先に言うべきことだったが、綺麗だ。ドレスも似合っているよ」
「あ……ありがとうございます」
そうして私は顔が熱くなっているのを感じながらも夕食の時間が迫っていたため、そのままアグルス様に連れられて私は夕食の場に向かいました。
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