第14話 ウェルダン・ウィッチは明日も煌き。①
——。
「ひひっ、ききき綺麗な空間転移いい……でですねね……」
「ふっふ、私はルーガスのような下品な移動はしないさね。魔法も魔力も安全かつ確実丁寧に扱うもんさ。危険な代物なら尚更だ」
「とはいえルーガスの奴が雑に魔法を扱っているとは言わないよ。アイツはキチンと魔力という物を分かっている。だからこそ多くの魔素が奴に惚れ、従うのさ」
「……」
「——風が‼ これって衝撃波? まだかなり距離があるのに……」
「ふぅ……あの二人を止めるにゃ、やっぱり私も少し——気張らんといかんね」
「どうするつもりなのでしょう、この我ですら彼奴等を止める術が思いつかないのだが——」
「ふっふ……若返るのさ。ふんっ‼」
「「「「——⁉」」」」
「ふぅ……はぁあ——あの婆の姿じゃ、キリティアの嬢ちゃんも私に気付けないからねぇ」
「やべぇ……アタシ、今日一番驚いたかも知れねぇ……」
「……私も」
「ふふ。誰にだって、若い肌つやの時期はあるものさ。私の発育は善過ぎてね。学院長という立場上も教育上も刺激的過ぎて、よろしくないから普段は変装しているんだよ」
「さてと——少し離れておきなさいな。極大魔法の見学だけしたいならね」
「極大魔法⁉ あの、六極魔女と呼ばれる所以である天災級術式をこんな間近で見れると言うのか‼」
「興味シンシンだねぇ。私の心まで若返りそうな無邪気な顔で」
「——お姉さん、張り切って見たくなったよ」
「ひひっ——周りの魔力がさわわぎ出したた……‼」
「……——好天に宿る因果なる約束。次すら亡くす壊滅の絶望、眼前に媚びる哀れな魂、皆等しく砂と煙に変り果てる。世界の全てが汝の敵か——」
「ぇ……ちょっと待って——キリアさん達を止め来たんだよね……コレ」
「な、なんだよ……この馬鹿デカい魔法陣……どんな契約をしたらこんな大魔法術式を空中に簡単に描けるようになるんだよ……魔力込めずに地面に書いたって何日も掛かるだろ、コレ」
「——否、心など彼の者になく、想いなど欠片もなく……ただひたすらに因果が産んだ約束を果たすものなり」
「極大魔法『アルテ・メテオン‼』」
「「「——……いいいい隕石いいい⁉⁉」」」
「フハ……フハハハハ、凄い、凄すぎるぞコレは‼ フハハハハ、以前に鑑賞した映画の魔法演出より遥かに凄い本物だぁ‼」
「感心してる場合じゃないでしょ、リュクシエルさん‼」
「このバカ魔法マニアが‼ 頭オカシイ奴らばっかか、この学院の連中は‼」
「こここの辺り一帯がが、ふふふ吹き飛ぶぶ——」
「あっ、一人でスキマに逃げようとしてんじゃねぇよマルティエーラ‼」
「安心しなさいな、ちゃんと手加減はしてるからね。ほら見ておきな、奴らが動き出すから」
「え……あ——キリアさんじゃない? ほらアレ‼ 今、空を跳んだの‼」
「……ホウキで飛べなくても、アレだけジャンプできりゃ立派な魔女じゃないか。ねぇ——嬢ちゃん」
「いや……アレ、跳んだっていうか、投げられたんじゃねぇか? ルーガス・メイジに」
「「「「……」」」」
「人に向かってぇ——石投げてんじゃないよ‼ このババア‼」
「「「「——‼」」」」
「そうやって直ぐに人に殴りかかるアンタに言われたくないよ、ルーガス‼」
「うきゃあああああ⁉ 今日、飛ばされてばっかりぃ‼」
——……。
「……いつつ……確かに、こんなのばっかな気がするな……」
「そうだ‼ 学院長先生は⁉ ルーガス・メイジ様は⁉ キリアさんは⁉ 隕石は⁉」
『——しっしょおおおおお‼ アナタ本当に……いい加減にしてください‼』
「ひひっ⁉」
「キリアさんの声⁉ どこから⁉」
「上……あの隕石の方からか⁉」
「これでも——喰らええええええ‼」
「石の軌道が——こっちに変わった‼ 来るぞ‼」
「——るっさいんだよ、この馬鹿弟子‼」
「極大魔法『グローブ・オブ・グローリー‼』」
「ぁ……か……」
「隕石が——消えた……」
「おお……おおう‼ いと素晴らしき、生粋の蒼空‼ 壮絶なる戦いの果て、魔の頂に立つ我が名こそ——‼」
「「「「——‼」」」」
「本当に殺す気ですか、この酒狂い‼」
「キリアさん‼ 無事だったの‼」
「——アレ、皆さん……はっ、まさか私……皆さんを殺すところでしたか⁉」
「そうだよ、この未熟者。守ってやったんだ、アタシに土下座して感謝しな‼」
「も、申し訳ありません‼ 私——熱くなってしまいまして周りが見えずに‼」
「アタシに土下座しろってんだよ‼」
「……どの口が言うんだい、ルーガス。周りが見えなくなんのはアンタも同じだろうが」
「あっ、そうだババア‼ テメェもアタシに詫び入れな‼ 今なら五発で許してやるよ‼」
「馬鹿をお言いで無いよ、まったく……ああでもしなきゃ、アンタら止まらんだろうからね」
「それから、先に私に詫び入れることは無いのかい、エリアトラ魔法学院のルーガス・メイジ先生」
「——‼ アナタは、学院長‼」
「この度はウチの師匠が申し訳ありません‼ いつもの我儘で約束を破ってしまいまして‼」
「……ちっ」
「いいさ、キリティアの嬢ちゃん。そんなのは初めから予想済みさね、コイツはアンタが関わると途端に心配性になるからさ」
「ルーガス‼ 愛弟子にこんな頭下げさせて、恥ずかしくならんのかい。一度決めたことを曲げるなんざぁ、これがアンタのいう筋の通った生き方なんだね‼」
「だってよ……なんか面倒くさくなったしぃ……」
「そのちょっと強めに正論を言われたら直ぐに動揺して不貞腐れるクセ、まだ治って無いのかい‼ 本当にロクでも無いね、アンタは‼」
「いつまでも気分でフラフラ生きてるんじゃないよ、ったく……どれだけ酒を飲もうが喧嘩しようが好きにすりゃいいがね、人の道はしっかり踏みしめて歩きな‼」
「「「「(こ、拳の魔女が……説教されてる……)」」」ひひっ」
「……まったく、さっさと帰るよ。ミナスフィアの良い葡萄酒の味が落ちちまわない内にね」
「アンタんトコの地酒じゃないか。けったくそ悪い……ダースで用意してんだろうね」
「ふっふ。2ダースは用意してるよ。そういや、ドリトルの奴を見なかったかい。アレに肴でも作ってもらおうと思ってたんだが、さっきから見掛けなくてね」
「あの犬畜生なら108回目のお使いに行かせたよ。今頃、バーラ地方の空の上さね」
「……(ドリトル叔父さん……)」
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