第13話 あの魔女は大団円には赴かない。①


——。


「つっ——大……丈夫か、アンタら……」

「な、なんとか私は大丈夫……マルティエーラさんとリュクシエルさんは?」

「ひひ……ぶぶぶじでっすす……」

「——……」


「……リュクシエルさん? リュクシエルさんは大丈夫ですか?」

「みな……今、何が起きたか解かった者は居るだろうか……我に教えてくれると助かる」



「ああ⁉ アホな師弟の喧嘩に巻き込まれたんだ——ろ……⁉」

「? どうしたの、二人とも——え……嘘でしょ⁉」


「ごごご……ゴミ捨て場ばば……」

「消えてる……そこにあったゴミ捨て場が——」



「なんだよ、そりゃ……衝撃波だけだぞ……狙って直撃させた訳じゃない……完全に、それだけでゴミ捨て場をその先の地面ごと抉り飛ばしたって言うのかよ——」

「途方もない……アレが、拳の魔女……」

「ひひっ⁉」



「‼ そうだ、キリアさん‼ キリアさんは無事なの⁉ こんな威力の直撃なんて‼」



「「……」」



「ダメだ。もう次元の入り口は閉じちまってるみたいだ……くそ」

「ディンナ、君ならまだ次元のスキマの向こうを覗けるではないか⁉ スキマ魔法は次元空間の魔法だ、なんとかキリアくんの無事の確認だけでも‼」


「むむむ無理……‼ 今のでで次元が入り乱れてて、あああ、安定してないからら……」



「アナタたち‼ そこで何をしているのです‼」


「あ、教頭先生……たち‼」



「この付近で悪魔が徘徊しているとの報せが入りました。それから先ほどの膨大な炎の放出、ここで何があったのですか‼」



「「「「……」」」」


「……ふっ。ここは我に任せよ」

「我が名は——リュクシエル・ガーベラ‼ 闇の深淵より出でて、いずれ世界に混沌をもたらすものなり‼」



「——……そうですか。では、先ほどの炎はアナタ方の仕業という事ですね」

「あ、いえ。違いますミガルス教頭先生」


「「「(あいたたたー‼)」」」


「ならば何があったか丁寧に報告なさい。事態は急を要します、なにがあったか正確に把握し、生徒の安全を守らねばなりません」


「落ち着いて深呼吸をし、ふざけている場合では無い事を自覚なさい」

「あ、はい。すぅ、はぁ……」



「(ヤバいぞ、アイツ正直に言うんじゃないか?)」

「(いや、でも任せろって言ったし、流石に本当の事は——)」

「(すすすごい……めめ、眼だけで会話してる)」

「(マルティエーラさん(アンタ)もね‼)」



「先ほど突如、空間に亀裂が入り——怒りに我を忘れていると思しき紅蓮の竜と共に拳の魔女ルーガス・メイジ様が現れたのです」

「紅蓮の……「「「竜?」」」」

「ぁ……」

「……」


「ゴホン。紅蓮の竜は巨大な火球を放ち、ルーガス・メイジ様の直線上に居た我々も、あわや焼け死ぬかと思えたその時‼」

「我らの眼前に立ち上がったのは級友にして盟友、至高の友、ルーガス・キリティアでした」

「ルーガス・キリティア……キリアは、ルーガス・メイジ様と師弟と呼ぶに相応しい連携を見せ、その拳で空へと火球を弾き飛ばしたのです‼」


「嗚呼、しかし相手は竜……さしもの二人も我らを守る為、身を挺した決死の反撃で現れた空間の狭間へと竜を押し返し、服を焦がされながらもこう気丈に言伝を残したのです」



「——この竜の相手は少し手こずりそうだから、学院を休学させてくれ。早ければ明日には戻る、と……」



「「「(やっぱり、この人(コイツ)とんでもない……)」」」



「(教頭に見えないようにピースしてんじゃないよ、馬鹿)」

「……それで、悪魔が現れたという話は?」


「はい。竜と共に現れたのは中級悪魔バフォメット。以前この眼に映しし書籍にて描かれていた風体に間違いありませんでした。しかしご安心を‼ 火球を弾き飛ばした勢いに巻き込まれ、この場に居たバフォメット共は火球の中へと消し炭一つ残らず消えていったのです‼」



「……今のミス・リュクシエルの話に間違いはありませんか。ミス・カルク」

「ええ⁉ あ、は、はい‼ 間違いありません‼」

「そうですか。所で、話の途中で不自然にアナタの右手が後ろに回ったのですが、背中を痛めているとか、もしや怪我や痛みがあるのでは?」


「「「「‼」」」」


「えあ……? い、いえ……たたた大したこ、事ではありませんにょ……」

「「「(うろたえ方と、汗が尋常じゃなひひっ‼)」」」


「ミガルス教頭‼ 大変です‼ 大変なんです‼」

「……ニーナ。どうしましたか? 落ち着いて適切に報告を」


「「「「(ほっ……)」」」」


「は、はい‼ 南方の荒野の方向にある遺跡付近から膨大な魔力衝突を感知、水晶鳥で事態を調査した所——二人の魔法使いの戦闘が確認されました‼」



「二人は現在も戦闘を継続中——凄まじい勢いでこの街に近付いてきています‼」

「その魔法使い……一人は拳の魔女ルーガス・メイジと判明‼ そしてもう一人はその弟子であり我が校の生徒ルーガス・キリティアです‼」



「「「「ぶふーっ‼」」」」

「は、はぁ⁉ なんでそんな近場に居るんだよ、あの二人‼」

「く、クライスラーさん‼」

「ぁ……ヤベ……」



「——……ニーナ。拳の魔女とルーガス・キリティアの他に竜の存在などは確認できましたか?」

「え……? い、いえ……戦闘行動を行っていた二人以外は……」



「さてアナタ方……いったいどういう事なのでしょう。先の状況説明と現実が乖離してきているのですが」


「ミガルス教頭先生‼ 我らに作戦会議の猶予を‼」

「却下します、事情は後で伺いましょう。私の名において、この四人を今すぐ拘束なさい‼」


「「「「うぎゃあああああ——‼」」」」


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