第10話 この魔女も破天荒を背負う。②

***

「んもう……避けてと言ったのに……勘が鈍ってますよ、ドリトルさん。その耳は飾りですか?」


「あんなタイミングで避けられるか……馬鹿野郎。それから、今はワー・ブロックス……だ」

「まぁ、良いクッションになってくれたおかげで私はノーダメージです。感謝します」



「キリア⁉」


「あ、クライさん。もう会えましたね、もしかしてお話の邪魔をしてしまいましたか?」

「い、いや……それよりアンタ、その格好……」



「それより——キリティア嬢、オメェさん、いったい誰と戦ってるんだ?」

「——危ない‼ ドリトルさんバリアー‼」


「あ、おい‼ ——ちょ‼」

「グギャアアアアぁぁ⁉」



「ドリトル叔父さん⁉ テメェ、キリア‼ 何しやがる‼」


「……良いですか、クライさん。落ち着いて聞いてください」



「あ゛あ? 今はそれどころじゃ——」

「師匠が来ています。ルーガス・メイジです」

「——⁉」



「そこのドリトルさんは、師匠のサボりを知りながら黙っていた極悪人なのですよ」


「いちち……そういう事か。クソ……なんでバレたんだ」

「ドリトル叔父さん‼ 無事、だった……のか——‼」



「——やぁ。おはようドリトル……相変わらず元気そうだねぇ。昨日の酒は良い酒だったよ」



「る、ルーガスゥ⁉」



「時にアンタ……私のゴウバリンディウムの残り、どうしたんだって?」

「——⁉」


「ま、待てルーガス‼ 話をしよう、アレには事情が——」



「話? ああ、いいね……酒でも飲みながら話をしようか」


「そ、そうだな‼ 揉め事は止めてキリティア嬢の入学祝いでもするか‼」


「丁度いい事に、キリティアの隠してた酒が小麦粉棚の中にあるらしい。ついでに煙草も持ってきてくれると助かるね」

「……は? どこの小麦粉……棚……だ?」



「私らのホーム」



「ま、待て‼ いったいどれだけ距離があると——⁉」

「さっさと飛んで行ってきな‼ このドアホがぁ——‼」

「ぐばらふぉあ——…………」



「「……」」

「アレが私の師匠、ルーガス・メイジです。あ、知っていますよね」


「あ、ああ……一応は、な……」


「ん? なんだい、その子は……ここは危ないからさっさとどっか行きな」

「……」

「私の友人です。ビジル・クライスラーさん、師匠が前に話してたカモリエッラのマセガキですよ」



「カモリエッラ……ああ! なんだい、あの時のガキかい⁉」

「え、あ——‼」

「はは、確かにそのリボン、私が貸してやったもんだね。驚いたよ、こんなにデカくなってたのかい、はははっ‼」


「⁉ ——ちょ——やめ——⁉」



「スキアリぃぃぃ‼」

「隙なんかないだろう——この馬鹿弟子‼」

「ぐぅ——‼」

「キリア‼」



「さて——再会のついでに、あの時の約束を果たしても良いが……どうしたもんかね」

「——⁉」


「キリティアと二対一でやるかい? アタシは別に構わないけどね」



「——ドラゴン・ブレス‼」

「……」

「ふっざけんな‼ アタシはもう、弱くねぇ‼」

「アンタを倒すのはキリアじゃねぇ、アタシ一人で十分だ‼」


「……変わらないねぇアンタも。その意気だけは昔から認めてやるがねっ‼」



「——はやっ、くそ……がっ⁉」

「——弟子飛ン(デコピン)」



「スモーキンズ‼ そいつも運んでやりな。まだベビーベットの中で育つ年頃さね」

「……」



「それで——あっちの方は、っと」

「初日の印象はどうだった? この学院は楽しめそうかい、クソガキ」



「——はい。とても……新鮮です」



「そいつぁ何よりだよ。今日で終わりにさせてやるのが忍びないがね」

「……師匠の思い通りにはさせません‼」


「だいたい、何で私を学院に通わせる為に学院の仕事を引き受けたみたいな雰囲気を醸し出してるんですか‼」

「皆さんが居る前では流石に言いませんでしたが、ここの学院長との賭けに負けたから師匠はこの学院の先生になったんでしょう‼」



「……ちっ。嫌な事を思い出させるね、ホントに。それもわざととは思わないのかい?」

「思いませんよ、この史上最凶の負けず嫌い‼」


「普通の学生生活は私の夢ではありましたが、例え……私が魔人と解かり、皆さんが私を避けても——弟子の責務として師匠には約束を守ってもらいます‼」

「魔女なら、契約は守らせろ。問題があっても契約した奴が悪い……師匠の教えです」



「そもそも‼ 約束は守るが道理‼ 人の道‼」


「……ぷはぁ。度数下げても酒は酒ってね‼」


「無視すんな‼ このド外道‼」


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