第9話 この魔女も、暴れる。②
「「「「……」」」」
「……ふっ」
「「「ふ?」」」
「立派に育ったもんだねぇキリティア。まったくアンタを拾ってやった時は、こんな光景……夢にも思わなかったさね」
「——……その子らは友達かい?」
「ミラさんは友人です。他の二人は、これから友人になる所でしょうか」
「そうかい……アタシには、もうアンタらは友達に見えるけどね」
「ふーっ……まぁアンタの言う通り、厄災級の討伐は嘘さ。ここに来る途中で2,3匹仕留めたから何日かサボろうと思ってね」
「(厄災級を2,3匹って……どんな道を旅してきたんだろ……)」
「けど——それとこれは——何の関係もないのよねぇ‼ アンタは、それがどういう結果をもたらすかを知りながらアタシの酒に水を差した、万死に値する重罪さ‼」
「「「(ええええええええ⁉)」」」
「……やはり、そうなりますか。因みに、残りの酒は小麦粉棚の奧の方に隠してあります」
「良い遺言だ……覚悟が出来てる、さすが私の弟子と言ってやろう……」
「たばこの煙が——⁉」
「スモーキンズ……アレは服に匂いが残るから嫌なんですよね……」
「勘違いしなさんな。コイツらは瓦礫の掃除に呼んだだけさ……このままだと、ここの学院長がうるさいだろうからねぇ」
「ま、とりあえず——死にな‼」
「ミラさん、ごめんなさい‼ 投げます‼」
「「「——⁉」」」
「あいたた……え? き、キリアさんは……?」
「ずぅっと後ろさ、カルクのトコの嬢ちゃん」
「——⁉」
「飛ばされた方向に幾つもの薄い氷壁を次々作って衝撃をいなす。最初に出会った頃と何も変わってないねぇ、アンタも」
「いや……他人を守る余裕は出来てるか。ったく」
「氷の壁……」
「後生大事なアンタのダチはスモーキンズでも守ってやるから全力で来な‼ キリティア‼」
「砕けた氷の破片が——きゃああああ‼」
「心配しなさんな。氷はあの子の十八番さね、ちゃんとアタシしか狙っていないよ」
「ぼ、防御結界……詠唱も構えもナシにこの精度、か……」
「ひひっ⁉ すすす凄いいいですね……」
「スモーキンズ‼ その子ら、そこらのゴミ捨て場にでも放り投げてきな‼ こっからのストリップは有料だからね」
「え、ちょっと待っ——ええ‼」
「ゴミ捨て場には——いやああああ‼」
***
「まったく……師匠は本当にロクでも無い。ミラさんたちは大丈夫だったでしょうか」
「人の心配してる余裕があんのかい。随分と偉くなったじゃあないか」
「——‼ このっ⁉」
「相変わらず、蚊の針より優しいね。私に歯向かいたいなら、もっと気合いを入れ——ちっ‼」
「炎氷拳……と名付けました。軽々しく女の美肌に触れると火傷じゃ済まないと教えたのは師匠、アナタですよ‼」
「ふん、ご立派なネーミングセンスしてんじゃないのさ。しかし私の美肌を小麦色にするなんざ、生半可な魔力じゃないね。いったい何処から仕入れたんだい?」
「この学院の正門です。邪魔だったので、壊すついでに穴一つ分を頂いたのですが思ったより魔力の補充が出来ました」
「ああ、アレか……またあの教頭あたりに嫌味を言われんのかい。保護者も辛いもんさね」
「ありゃ高位結界を使える術士が数人がかりで一年かけて作るもんだ。凝縮された高質な純度の魔力結晶体……アレを中規模の街の生活エネルギーに変えたら二月くらいは賄える」
「教頭先生は、正門はまだ未完成で完成の半年分くらいの魔力だと仰ってましたよ」
「はっ、ドヤ顔してんじゃないよ……ガキの私の薬指デコピンで消し飛んだ『板』如きを飲み込んだ程度で。なんなら、昔みたいに周り全部の魔力を喰らって私に挑んできな」
「さしずめ炎獄拳って所かね……仕組みはアンタのそれに似ているよ……仕組みだけはね‼」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます