第7話 その魔女らは平和を拒まない。②

「と、とにかく食べようか。頂きます‼」



「——……偉大なる大地と空と海よ我が名はマルティエーラ・ディンナ。汝らが慈しむ命の煌きを糧とする罪を赦したまえ。贖罪に我らもまた先々の未来にて今日培われた命を輝かせ、汝らと共に世の理を守る事を改めて強く誓う。今一度名乗る、我が名はマルティエーラ・ディンナ。汝の輩にして、いと小さき弱者にして、いずれ強者と至る者である」


「「「「……」」」」


「……あ‼ いいいいい頂きます‼ ひひっ‼」

「いや待て。今のもスルー出来ねぇわ、ちょっと」


「べ、別人かと思った……」

「……カッコヨシ」



「あー、今ので思い出しました。ディクニデウスさんの娘さんなのですね、マルティエーラさんって」


「——⁉ ちちちちち父を知っててて⁉」


「はい、何度か魔獣討伐を共にした事がありまして。とても強くて、ご立派な方ですが娘さんには手を焼いてると言って居ましたね、そういえば。ほぐっ」


「……」


「恥ずかしがり屋で、あまり外に出ず、引き籠ってばかりの娘さんってマルティエーラさんの事ですよね? まさかスキマ魔法の中に引き籠っているとは思いませんでしたよ」


「あの人が手を焼く訳ですね。魔力感知系は得意では無いようでしたし」



「た、確かマルティエーラ・ディクニデウス様って……剣聖と並ぶ強さの……」


「ああ。現マルティエーラ当主の嫡男で今は三騎士団長の一人。まぁ、ウチの……親父の友達だ。頭が痛くなってきた……千里一眼、全てを見通す魔眼を持っているって話なんだが」


「はぐっ……ゴクリ……はぁ、そうでした‼ 私その事であの方をぶん殴ったのでした‼ 謝らなければ‼」


「マルティエーラさん‼」



「ひひひいっ⁉」



「いずれ私が謝罪に行くとお手紙を書いていただけませんか⁉ いきなり訪れるのは失礼らしいので‼」

「ひひっ……ほ、ホントにちち父をなぐぐぐ?」



「はい……実は——あの時は事情も知らず、身勝手な事を言われたと勘違いしてしまい……」


「——因みに……その身勝手な事ってのは何だよ? あんまり聞きたくないけど」


「えっと確か……『娘も君のようになってくれると良いのだが』だったと思います」

「え。今の顔真似なに。ゴメン、話が入ってこなかった」


「それで私はお師匠様の訓示を述べて殴ってしまったのです」



「誇りとは——誰かの真似に非ず……己を磨いた末の輝きであれ‼ と‼」



「誰かと比べてその先に至ろうと、己の輝きは手に入らない。誇りとは被るものでも着るものでもなく磨くものであるから」



「「……」」


「それで殴った上に、千里一眼の魔眼が聞いて呆れる。アナタには何も見えていない、ちゃんと娘を見ようともしていない、とまで……あの時は言ってしまいました」


「まさかスキマ魔法で隠れていたとは……幾ら魔眼でも別次元移送魔法の一種であるスキマ魔法は対象外ですからね。そもそもの適正が高い人や訓練した人でし……か……」


「はっ‼ そ、そういえばあの時以来……ディクニデウスさんには会っていません。やはり怒っていらっしゃるのでしょうか。あわわ……」

「ひひっ‼ だだだ大丈夫ぶ……ちち父はは、怒ってないいいから……」



「——うぐっ⁉」

「……なんだよガーベラ、こんな時に。流石に今は空気読めよ」



「あ、ゴウバリンディウムは急激に摂取すると逆にパーンしますよ」

「え、パーンって何⁉ 怖い‼」




「パーン‼」




「が、ガーベラ⁉」

「わ、我が名は——リュクシエル・がーべら……がくっ……」

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