第6話 この魔女は不気味を纏わない。①


「ああー、ホントにびっくりしたよ……心臓が飛び出るかと思った。ずびびー‼」


「スキマ魔法で隠れてるとか誰も思わねぇだろ。いつから気付いてたんだよキリア」



「えーっと……いつから、と言われましても。彼女はずっと更衣室に居ましたしね」


「ドッジボールの時に、三人残っていたのにクライさんが二人と言って居たので、最初は幽霊かと思っていたのですが……足がありますし」

「え」



「……あの時、居たの、アンタ?」

「ひひっ……はははい……そそそ存在感が薄くてすすすみません……」


「……ああ、そう。でも、まあスキマ魔法を使ってたなら気付かなくて当然だよな」

「いえ、あの時は使っていませんでしたよ? ルールでも反則ですしね」

「え」



「……そうなのか?」

「ひひひっ……はははい、すみません」


「それは何かゴメン……あー。所でさ、アンタなんでそんな離れてそんな移動の仕方してんの」

「ひひひ……ふふ普段は、誰にも見えないよよように、いいい移動してて」



「……なんか生首が追い掛けてきてるみたいで、ちょっと気味が悪いんだけどさ。普通に歩けるなら歩いてくれねぇかな」


「空間のスキマを縫いながら移動するとか器用な事しますね。一歩間違えたらホントに首が飛んでしまいますよ?」

「マジかよ。そんな危ねぇなら、とっとっと出て来いよ‼」



「ひひひぃっ⁉」


「あ、逃げやがった‼」

「……はは、恥ずかしがり屋さんなのかな?」


「——はっ⁉ そういえばまだ名前を聞いていません‼」

「出て来て下さい‼」


「うひぃっ⁉ ななななんで⁉」



「……な、なぁミランダ。あんな奴、ウチのクラスに居たか?」

「……い、居たよ‼ うん、居たんだよ‼」


「ウチのクラスって、確か29人だったよな。それでキリアを入れて30」

「でもキリアが来る前の二人一組とかの授業、アタシずっと最後に余った奴とやってたんだけど、数が合わないよな」


「……ふ、不登校? みたいな?」

「そういえば今日のドッジボールの前、三人でストレッチしてる奴いたよな。アイツ、今日の試合には居たってキリアが言ってたけど」




「……そ、そういえば今朝、ハルキルトさんがお腹が痛いって言ってたような」

「——所で。アイツの名前、知ってるか? クラス委員長」

「…………知りません。ごめんなさい‼」


「不登校という言葉が聞こえました‼」

「うおわっ⁉ イキナリこっちに来んなよ‼」



「もしかして私たちの学級には不登校の方が居るんですか⁉」

「あ! もしや、この方がその不登校の方‼」

「ももももう、めめめ捲らないいいで‼」



「わわわ私は毎日、きき来ててます。ふふふ不登校じゃありりりません‼」


「「……」」


「わわ私は、あああまり人に気付かかかれないから、そそそう思われててるだけ……‼」

「ひひひひ人と話すとか、むむ無理だし……めめ目立つのも……」


「? 何故ですか? なにか呪い的な問題でも? いえ、しかし今現在、お話出来ていますし」

「……む、む無理、だだから」



「そういえば先ほどから小刻みに震えていますね。なるほど、これが呪いの症状と——」

「もう良いっての。呪いじゃねぇだろ、絶対」

「アタシはビジル・クライスラー。アンタの名前は?」


「……ひひっ‼」

「はぁ……キリア。アイツ、何処に行った?」



「ここですが?」

「ひひぃっ⁉」


「……えっと私は、カルク・ミランダです。アナタの名前は?」

「……すすい‼」



「え……っと、キリアさん」

「忙しいですね。えいっ‼」

「……‼」


「そしてアナタを見つける私が、ルーガス・キリティア。アナタの名前を教えてください‼」



「……、……」


「はぁ……無理みたいだな」

「マママル……」


「マママルさん?」



「ま、マルティエーラ・ディンナ……でです」

「マルティエーラ……」

「まさかの侯爵家かよ……」


「では、名前も聞いた事ですし、この四人で食事に行きましょうか‼」

「「「……」」」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る