第5話 その魔女は明朗に笑う。②
***
「まさかこの私が、あのリボンを忘れるなんてね。ったく、動揺し過ぎだっつー、の‼」
「う゛わああああん。ごめんなざい、ごめんなざーい‼」
「うわぁあ‼ 何事だよ⁉」
「あ、クライさん。丁度いい所に‼」
「ミラさんが何者かの呪い攻撃を受けたようです‼」
「……は?」
「涙と鼻水が止まらず、これはカフンスギの呪いに似た症状です‼ 急いで保健室で処置しなければ脱水でミラさんが死んでしまいます‼」
「だがら、゛ちがうっでばぁぁぁあ‼」
「この症状に心当たりが⁉ カフンスギで無いとしたら私の知らない未知の病気⁉」
「いや、普通に号泣してるだけだろ」
「ビジルざん、ぜいがい‼」
「ええ! これで泣いてるだけなんですか⁉」」
「まったく……あんまり驚かせんなよ」
「それにしてもミランダが号泣してるとこ初めて見た……いつも陰で泣いてたのは知ってたが」
「で、何が原因。って……聞かなくても何となく分かるけど」
「原因……思い当たるのは、やはり私のデコ——ふも⁉」
「もう、これイジョー、喋らないでよォ、キリアさんんん‼」
「ふごも⁉ ふごもも⁉」
「泣きギレかよ……何だコレ、ヒデェ光景だな、くふっ」
「ふふ……ははは」
「ズビーっ‼ ひひっ……はははは……」
「もご⁉ もごもご⁉」
***
「はー、まったく何やってんだよ。アンタら」
「すん……ぐすん……だ、だって、キリアさんが……」
「あー、もういい。また泣かれても困るし」
「そういえば、クライさんは何故ここに戻ってきたのです?」
「あ——、もしやクライさんも私たちとお食事をお誘いに⁉」
「え? メシ? 私は忘れもんを取りに来ただけだよ」
「あ……そうなんですか……」
「——……そんな露骨にガッカリするなよ。別にメシくらい一緒でもいいし。あった、あった」
「それは……髪を纏めていたリボンですね」
「まぁな、これは大事なもんだから」
「……なぁ。ルーガス・メイジは本当に学院に来るのか?」
「? まぁ……はい、恐らくきっと、たぶん来るには来ると思いますが……そのうち確実に」
「なんか歯切れの悪い答えだな……別に良いけどよ。そのうち、来るなら」
「うーん、まぁ……でも、クライさんこそ、なんだか言葉に含みがありますよね。師匠に何か御用でも?」
「ん……ああ、このリボンを自分の物にするんだよ。これは、アタシがルーガス・メイジに借りているものだから」
「——ああ! もしかしてクライさんってカモリエッラのマセガキですか⁉」
「知ってんのか⁉ もしかしてルーガス・メイジに聞いたのか⁉」
「はい……昔、師匠が酒に酔ってる時に珍しく下ネタ以外の話をしていたので良く覚えてます」
「そ、そうか……まだ、覚えてんのかな……」
「ぐすん……どんな話なの? クライスラーさんの子供の頃の話?」
「はい。師匠がカモリエッラという場所で出会った可愛い女の子との昔話です」
「ちょっ、待て‼ テメ、ぜったい話すなよキリティア‼」
「何故ですか? とても良い話なのに」
「とにかく、ダメなものはダメなんだよ‼」
「そんな事より、メシ食いに食堂に行くんだろ? 早くしないと混み始めるっての」
「あ、そうでした。急ぎましょうか」
「ぐすんっ。クライスラーさんの話は……?」
「はは、ミランダ。テメー、もう一回泣いとくか?」
「ご、ごめんなさい……」
「そうだ。良かったらアナタもどうですか? せめて、お名前を教えてください」
「「……?」」
「おいキリア、アンタ誰に話しかけて——」
「継ぎ目はココですね……コレをビリビリっと」
「「「……へ?」」」
「「「ええええええええええええ‼」」」
——。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます