第4話 この魔女は人を呪わない。①


「それでは魔球ドッジボールの試合を始めます。あまり無茶をして相手や自分に怪我をさせないように!」



「——この球技、ルールは把握しましたが難しいですね」

「……何が? 魔法をボールに込めて相手にぶつけるだけだろ?」


「いえ‼ これは相手を殺さないように手加減を覚える為の高度な魔力操作のトレーニングですよ‼ 相手が弱すぎて難しい‼」

「……さすが、拳の魔女の弟子。煽りがストレート過ぎる」


「けど、魔力制御なら出来てんだろ? 今更だけどアンタから魔力なんて殆んど感じないし。強い気配は感じるけどさ」



「試合開始‼」


「それはですね。私、実は——」

「思い知れぇ、編入生‼ ファイアーボール‼」


「あ、はい。編入生ではなくルーガス・キリティアですが」



「……へ?」



「今……アンタ、防御魔法使った?」


「? いえ、素手ですが? 普段の私は魔力が常に欠乏しているので、あまり魔法を使えないんですよね」

「魔力が欠乏?」


「?」

「?」


「とにかく、私は魔力制御が下手なので暫く攻撃は遠慮しておきます。このボールを任せても良いですか?」

「あ、ああ……考えるのはよそう。なんとなく、考えても無駄だと思った」


「それに授業とかで真面目にやる事ないんだけど、たまには良いかもね」

「ちょっとアンタとやり合いたかったから味方なのは不本意だけどさ」


「(拳の魔女の弟子に良い所を見せるチャンス‼)」

「行くよ……雑魚ども」



「なんだかワクワクしますね‼ ね‼」

「ビジルが投げるぞ‼ 防御魔法を重ねろ‼」



『ドラゴン・ブレス‼』



「うぎゃああああ⁉⁉」



「ほえー、竜魔法ですか‼ 格好いいですね‼」

「魔法を殴って飛ばすのも師匠みたいです‼」


「そ、そうか……? ま、まぁこの魔法は確かにルーガス・メイジを真似したもんだからな」

「今の威力なら、向こうの陣地の人たちは全滅したんじゃないですか?」


「やり過ぎだ‼ ビジル・クライスラー‼」

「殺さない程度には手加減してるって——‼」


「うわぁ‼」

「きゃああああ!」

「——はぁ⁉」



「あれは——水魔法ですか。器用なものですね……ミラさん」


「……」

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