二度目のカクヨム転生で人生をやりなおす

水原麻以

二度目のカクヨム転生で人生をやりなおす

実は私、転生者です。一度、自分自身の首を絞めて殺しました。

それがまるで異世界転生を地で行く生き方でカクヨム生活を満喫しております。

よくある話だと思いますが、無反応に絶望して退会ボタンを押す。

満を持して公開した自信作が全く読まれずに何か月も放置されている。

そんな無関心に耐えられずカクヨムを諦める人も多いのではないでしょうか。


私もその一人でした。


カクヨムが鳴り物入りで始まった頃、某大手投稿サイトにない真っ新なステージに期待したのです。開拓者の気分で意気揚々登録しました。


ところがいざ蓋をあけてみると評判がかんばしくありません。

「カクヨムは読まれない」

「●●●ほどにはPVがない」

「というか、桁が違う」

そんな報告がちらほら出てきました。実際に有名な作品をカクヨムで検索してみますと★やフォローの数が驚くほど少ない。うーんと思わずうなってしまいました。

事実、自分の作品を投稿してみますと全く読まれません。

本当にそうなのか疑問に思ってグーグル先生に訊いたところ、絶望して自分のブログに作品を移した方がヒットしました。

そうなのか、潔く撤退するのもありか、と私は考え始めました。

何十万人も会員がいるサイトではエッセイでも短編でも投稿さえすればなにがしかの反応があります。


ブックマークは1つ、1点でも嬉しい。評価されなくてもPVが励みになる。書き続けるモチベーションになる。

そんな燃費効率のいい作家もいるでしょう。

自分もそういう類で、結構な作品をカクヨム以外で百本、二百本と投稿しています。


それだけ分散しておけば、やれブックマークが1つ減っただのやれ1ポイントで爆撃され、だの不毛なマイナス感情にとらわれずに済むからです。

何より、執筆じたいが楽しい。思い悩む時間やエネルギーを構想に費やしたい。


そして、ありがたいことに感想や評価をいただいています。

数撃てば当たる。

カクヨムもそうだと信じていました。


その幻想はカクヨムの壁に砕けました。


見事にゼロのオンパレードでした。

しかしこれは自己責任、自業自得でもあります。だって読者に寄せる努力をしないで「自分の読みたいもの、書きたい作品を書く」をやっていたら、読者に選ぶ権利を行使されます。

「カクヨムよ。やっぱり読まれない伝説は本当だったか」

とうとう私は退会ボタンの前で逡巡しはじめたのです。


いまにして思えばこの時の自分を殴ってやりたいです。

「あんたバカ? 苔の一念で私は賞を取ったよ。それも二つ! あなたが、いや、ウェブの物書きなら喉から手が出るものだよ」


そんな未来があるとは夢にも思わず

悩んだ末に

退会ボタンを押しました。

同時に何十万文字と書いた私の作品も消えました。

だってかすりもしない作品なんか未練もない。電子の藻屑となれ、です。


そして、私は気を取り直して他のサイトでコツコツと活動を始めました。

この地道な努力はのちに見事に実を結び、カクヨムのマイページに開花します。


カクヨムに戻る気持ちの余裕が生じたのは昨夏のことです。

その日、私は有頂天を突き抜けておりました。

賞の規模はともかく、誰もが欲しがる文学賞です。

それもコンクールではなく書籍化を取り扱う投稿サイト主催の公募です。

「紙の本を出している出版社の編集さんが読んで前向きな講評をくれて、こいつの文章にはお金を払っていいと判断してくれた」


嬉しいです。生きていてよかったと天に感謝しました。

そして、気持ちの余裕がアカウント再登録を促したのです。


第二の人生がカクヨムで始まりました。


投稿してもサッパリ読まれない現状は相変わらずです。

しかし、その時の私は「ふんふんふ~ん♪出版社の認証通ってるんだも~ん。プロフに書ける著者略歴付よ~」という人生のオマケを謳歌する気分。


そして、投稿しました。



…やっぱり、読まれない。

カクヨム不毛伝説は鉄板だったか。

そう考えて腹をくくりました。

相手にされないということは、苦情とも無縁だ。

カクヨムはそれこそ自由な砂場として使ってやる。


そう気持ちを切り替えて前衛的な試みや実験作を地道に投稿し始めました。

そして、飽きて放置していたのです。


カクヨム砂漠に捨て置かれたキャラクターたちの無念なぞわかろうはずもなく。


その間にもいくつかのサイトを放浪しておりました。


そして、私は奇跡的な出会いを果たします。

自主企画です。

「えっ、カクヨムって結構イベントをやってるじゃん」

渡りに船ででした。


おそるおそる参加して、どうせ玉砕すると諦めつつ、企画のために書き下ろした作品に★がつきました。


カクヨムは読まれない伝説は私の思い込みだったのです。


不毛の砂漠は開拓すればよい。そして作品を捨て置くよりも、集まった方が読まれる。


いまにして思えば普遍的な事実です。

そのやり方で他でもそこそこモチベーションを得ているのに、どうしてカクヨムに通用しないと信じたか。


最後に私の得た教訓を述べて締めくくりたいと思います。


返報性の法則はカクヨムでも健在です。

書きましょう、読みましょう、参加しましょう。


だってカクヨムっていうじゃないですか。






仲間の力を借りながら、うまくいかない人生を、二人三脚でやりなおす。

その一歩は決してあきらめない、あなたの信じる力によって始まります。

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