第7話
神フォンのマップ機能を使って、現在地の拡大マップを表示する。
この森の名前は『クワイエットの森』というらしい。
マップ上には俺様が青色の点滅で、魔物が赤色の点滅で表示されている。
それ以外の色の点滅は無いようだ。
「やっぱり居た……」
身長百五十センチ、小学六年生ぐらいの身長で、筋肉ムキムキの猿に似た、全身緑色の魔物を見つけた。
右腕には野球のバットよりも芯が太い、表面がゴツゴツした木製の棍棒を持っている。
【名前=ゴブリンソルジャー。種族=ゴブリン族。レベル=8。
HP=2450/2450。MP=593/593。
腕力=117。体力=132。知性=61。精神=73。
重さ=軽い。移動速度=少し遅い。
装備=棍棒『攻撃力210+魔法攻撃力140』。
武技=『ゴブリン棍棒術初段』】
腕力、僕の二倍以上⁉︎ しかも武器持ち⁉︎ ゴブリン棍棒術初段⁉︎
ゴブリンの癖に色々と生意気過ぎる。
どう考えても、この辺の魔物は強過ぎる。
レベルは7~8で、確認できたのは四種類だけ。
絶対とは言わないけど、安全には勝てない。
おそらく体力や精神力はスタミナや精神的な強さの数値だと思う。
防御力や魔法防御力とは一切関係していない。
あのゴブリンソルジャーの腕力が117ならば、僕に与えるHPダメージはおそらく三倍の351だ。
計算では一撃は耐え切れそうだけど、武器の攻撃力をプラスすれば、一撃ノックアウト確実だ。
「どうしよう? 動きが遅いから、キックとパンチで十七発当てれば勝てるけど、あっちは一撃で僕を殺せる」
レベルを上げるには戦わなければならない。
でも、一撃でもゴブリンの攻撃が当たれば即死だ。
僕は勇敢な男じゃない。拳銃を持っているような魔物と素手では戦いたくない。
神フォンで回復アイテムは買えるけど、HPを三十パーセント回復するアイテムが50エルもする。
武器は一番安い剣でも、『攻撃力90+魔法攻撃力80』で610エルもする。
「こんなの無理ゲーだよ。木の枝をへし折って集めれば、お金にならないかな?」
ゲームならば、死んでも何度でもやり直しは出来る。
でも、この世界は人生と同じで一発勝負だ。
今の僕から見たら、ゴブリンは拳銃持ったプロレスラーと同じだ。
正直、別の魔物を狙いたい。
でも、この辺にいる残り三種類の魔物も、似たような感じだ。
【名前=ミニトレント。種族=トレント族。レベル=8。
HP=3600/3600。MP=237/237。
腕力=120。体力=135。知性=66。精神=83。
重さ=重い。移動速度=普通。
特技=『葉っぱ手裏剣』】
歩く樹木。ミニとか言うけど、身長二メートルは確実にある。
幹の胴回りは体重九十キロのおデブ高校生よりも太い。
HPも腕力も高いし、デカいし、葉っぱ手裏剣⁉︎ 戦うのは論外だ!
【名前=
HP=2080/2080。MP=561/561。
腕力=94。体力=92。知性=80。精神=46。
重さ=軽い。移動速度=普通。
特技=『ロケット鳥頭突き』】
外見は少し大きめのニワトリサイズの黄色いヒヨコ。
でも、可愛い外見に騙されてはいけない。
飛べない代わりにバッタのような脚力で、凄い速さで向かって来る。
その危険度は釘付きのドッチボールと同じ。
しかも二発命中で人生終了だ。
もちろん防具と回復アイテムが無いなら、戦うのは論外だ。
【名前=
HP=1880/1880。MP=336/336。
腕力=111。体力=123。知性=115。精神=122。
重さ=軽い。移動速度=普通。
固有能力=『毒鱗粉(接触感染)』『浮遊』】
毒蝶々は正月に遊んだ凧揚げに似ている。
紫色や黒色が混ざった、五十センチの正方形の毒々しい折り紙が飛んでいる感じだ。
パンチやキックで身体を攻撃したら、即毒状態になるらしい。
しかも、神フォンのアイテムショップには毒を治すアイテムがまだ売られていない。
戦うのは論外。考えるまでもない事だ。
「はぁー、お腹空いた。このままだと、空腹で先に死にそうだよ」
もっと弱い魔物が出る場所を探して、確実にレベルアップした方が安全確実だと思う。
多分、欲しいアイテムは神フォンに搭載されているRPGゲームを進めないと、手に入らない困った状況だ。
もちろんHPが回復した小豹と二対一で魔物と戦うという方法もある。
小豹と一緒に戦って、毒蝶々のHPを十パーセント以下にした後に、小豹には殉職してもらう。
小豹の代わりに毒蝶々と友達になるという作戦だ。
毒蝶々の毒能力は強力だ。
友達に出来れば、毒蝶々が魔物を毒状態にして、弱った所を僕がトドメを刺せる。
危険なのは毒蝶々と友達になる最初の戦いだけだ。
「ここは命を懸けるしかないよね」
クワイエットの魔物はレベル7~8だ。
この異世界で一番弱い魔物がレベル1ならば、一桁台の魔物は雑魚中の雑魚だ。
レベルを上げられるボーナスステージを見つけて逃げ出す訳にはいかない。
ゴブリンソルジャーから武器を入手するのは、毒蝶々と友達になった後でいいだろう。
「よし、確か毒蝶々はあっちにいたな」
移動しながら、地面に落ちている手頃なサイズの小石を回収する。
ついでに木の幹から伸びている木の枝を四本へし折った。
写真を撮って、小石と木の枝を神フォンに収納して、木の枝の写真を確認する。
木の枝を五本。小石を三十個収納している。
やっぱりどちらも『取り出し』は表示されているけど、『換金』は表示されない。
数が足りないのか、換金不可の素材があると見るべきか……。
とりあえず、小石と木の枝は手に入った。
次は新しい友達を手に入れよう!
「見つけたぞ。小豹、出て来い!」
『ニャア!』
フヨフヨと飛ぶ不気味な折り紙を見つけたので、足元の影に呼びかけた。
すぐに足元の影の中から、小さな豹が元気に飛び出してきた。
「HPは108か。一撃でも毒蝶々の攻撃を喰らったら終わりだな」
小豹のHPを確認したけど、108と頼りないものだった。
確かにHPは回復しているけど、小豹のHPが満タンの状態なら、毒蝶々の攻撃に三回は耐えられた。
作戦としては、小豹には鳴き声で毒蝶々を威嚇してもらい、注意を僕から逸させる。
僕への注意が逸れた毒蝶々に、僕が中距離から投石でダメージを与えていく。
毒蝶々の注意が完全に僕に向いたら、そこに小豹が攻撃する。
小豹は攻撃すれば、毒状態になるけど、友達ならば多少の危険は覚悟してくれる。
おそらく、これが今の状況でベストな作戦だと信じている。
「小豹は威嚇と隙を突いての攻撃だ。死んだら駄目だからな」
『ニャンニャン!』
「よし、いい返事だ。行くぞ!」
『ニャア!』
小豹がなんて言っているか分からないけど、理解したと思うしかない。
小石十個を神フォンから取り出すと、毒蝶々との戦いを開始した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます