第7話 老将の疾走、天命

各地に応援を要請して回っていた老将だったが、良い回答は一つも得られず、途方に暮れていた。しかしそれはそうだ。

「真の第六天魔王が降臨なさる。共にそれに続かないか?」

なんて文言、意味不明もいいところだ。老将の狂信に付き合えるほど戦国の世は暇ではない。

「くそ、何奴も此奴も愚者ばかりだ。だから戦しかできんのだ」


小生、明智光秀にとっての天命はただ一つ、「日の本に平和の世をもたらす」事のみである。母を失った日、小生はそれに気付いた。しかし小生一人ではそれは叶わぬ夢。ならば強大な力、寛大な懐を持つ方に一任するが吉である。いま小生が知る限りでは、それはやはり信長様だけであった。御館様は常に小生の期待に答えてくださった。たまの横暴など気にならぬほどだった。その輝きは、小生に新たな天命をくださるに違いない。小生には、御館様しか「天と人を繋ぐ」第六天魔王になる資格を持つものは考えつかない。


だから小生は走る。今はただ走る。天魔王召喚十一の儀が完遂するその日まで生きねばならん。


本当はこんなに早いつもりはなかった。天下を平定した後でよかった。しかし謀反が御館様を襲った。「ヤツ」が暗殺部隊を御館様に向けておくったという報を聞いてしまったのだ。御館様に謀反をするなぞ、ありえない。しかし「ヤツ」はことを強いた。だから小生は猿への援軍を取り止め、本能寺へ向かった。

時すでに遅し。本能寺は燃え盛っていた。無情過ぎる光景だった。おそらく御館様自ら放った火であろう。とりあえず暗殺部隊を討った。口を割るものはいなかったがその必要はなかった。小生には分かっていた。

御館様を救う方法は一つあった。小生の計画ではそれはもう少し後にしたかったが、事態は待ってくれぬ。だから小生は十一の儀を始めた。御館様を守る。ヤマトの平和の為に。


運命の時は近い。母上、きっと小生はやり遂げてみせる。待っていてください。

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