第3話 第六天魔王信奉者
「あぁ、燃えている......」
燃え盛る本能寺を前に、恍惚とした表情でそれを眺める老将がいた。
「光秀様、御館様が火をお付けなさってから二日、未だ大きな反応はございません」
跪き、報告を済ませる家臣。
「良い、これで良い。秀吉がどうせ飛んでくるだろうから、それを食い止める時間さえ稼げれば良い。天魔王召喚十一の儀は始まったばかりなのだ。たった十一日耐えれば、信長様は本当の神に......乱世を治める真の『第六天魔王』に......」
炎の勢いは決して衰えない。老将は、その炎を見ていると自分の今まで抱えていた主君への忠誠を見ているようで、それだけで救われた気分になっていた。この火を十一日間だけ絶やさなければ、この結界を十一日間だけ維持出来れば、あとは中で信長様が事を成してくれる。
あのお方はそういう人だ。
爆煙を捉えるその眼は、少年の真っ直ぐなそれにも見えた。
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