第15話 ぷっぷちゃんはやれば出来る子 ②

 ぷっぷちゃんにお礼の言葉をいうと、パネル画面からもすぐに返答の点滅があって、ぷっぷちゃんからもコミニュケーションを取ろうとしているのが解る。


 神の御声で直接やり取りするのは、出来ないみたいだけど、今はそれでもいいと思う。

 

 神のシステムが進化したぷっぷちゃんは、対応力が物凄くUPしていて背中の痒いところに手が届くように、きめ細かい対応をしてくれる。


 何かいい方法が思い浮かんだら、ぷっぷちゃんとの意思疎通もなんとかなりそうな気がする。


 これなら、ほかの人にわざわざ人柱になるように仕向けて、スキルの試し打ちをしなくても大丈夫かもしれない。


 孤児院時代での勇者魔王ごっこの遊びをする前段階で、みずから積極的に魔王役を名乗り出て【魔力波動】の乱れ打ちをするような馬鹿なやり方をしなくても良さそうだ。


 私的には、ルバッカやフェゼラから感じるわだかまりやしこりが解消したら、是非ともスキルの実証実験の実験台と称して、人身御供の人柱になってほしかったけど……。


「そういえば、この前の新人研修の待ち合わせ場所でみかけたルバッカとフェゼラは、あの時に受けた怪我の傷が、まだ完治してなさそうだった……」

 

 表情も暗そうにしてたルバッカとフェゼラ。

 ルバッカは、骨折した左手を保護して三角巾で吊ってた。

 フェゼラは、包帯で右目の怪我を隠して左足を引きずっていて、その痛々しい怪我は、まだ治ってなさそうだった。


 ここに来てからは、なるべく人前では距離を置いて遠くから見守るようにしていた。なので、ルバッカとフェゼラが私の親友だと、まだ、周りの大人達には知られてないはずだと思う。


 ここに来てから、私が心がけていた行動指針は、大人達の関心が私のほうに向くように周囲の注目と引きつけて、2人に大人達の関心がいかないようにすることと、私が矢面に立って大人達の悪意を私に惹きつけるように仕向けることだった。


 だから、2人が私の知り合いだと知られると、私に集中している大人達の悪意が2人の方にまで向けられてしまうかもしれない。


 そうなると、過去の大失敗の時のような最悪の展開になる可能性も、決して有り得ない話ではない。私としては、あの時の失敗で懲りているから、2度と同じ過ちは繰り返したくない。


 それもあって、大人達の目を気にして、なかなか2人に接触する機会がやってこない。


 あの痛々しい姿を見てしまうと、無性に2人に手を差し伸べたくなるけど、それが本当に正しい選択なのか判断できないまま時間だけが過ぎていって、結局、いままで手をこまねいたまま、遠くから見守ることしか出来なかった。


「何とかして完治するように手助けしてあげたいけど……私が新しく取得した新スキルで治せればそれが一番手っ取り早くて助かるんだけど、あの【お薬たまご】で治せるのかな?」


私は、自分の思考を言葉に出して言った。

 

 そのなにげない行為は、2人の親友のことを考え込んでいたら、知らず知らずのうちに声に出して、誰に聞いてもらうでもなく、ただ自然に口から漏れ出たものだろう。




 だが、その溢れた声とシルアが心の奥底で考えた一連の思考は、自我の芽生えが始まったぷっぷちゃんの意識集合体が聞き入り、その慈愛の欠片を拾い上げていた。


 先程、訓練施設に向かう道中の合間に、シルアが呼びやすいからとなにげに〝ぷっぷちゃん〟と名付けをいていたが、その行為を一元的に契約儀式ととらえた神のシステムが命名契約締結と受理したことから、徐々にぷっぷちゃんの自我が芽生え始めていたのだ。


 その思いが溢れた独り言と心の奥底の願いは、すぐ側で献身的にサポートするぷっぷちゃんの意識集合体が集合すると、優先度の高い情報として集約されていく。


 そして、すぐに……。


『たまごクエスト:お助けたまごクエストを受理した』

『たまごクエストに新たなクエストを追加した』


 今日になってから頻繁に拝聴しているように思えてならない神の御声が、また、私の脳裏に直接届いた。


「えっ…ぷっぷちゃん、お助けたまごクエストって何??」


 私の声に反応したぷっぷちゃんは、すぐにパネルを切り替えると、画面上にお助けたまごクエストを掲示した。

────────────────

  ────検索画面────  

 お助けたまごクエスト

 ルバッカとフェゼラの怪我を誰にも

 知られずに治してみよう。

 (0/2)

 ◎詳細はここをクリック。


 報酬:たまごSP5000

 報酬:たまごコイン5000玉

 追加報酬:50000ギル

 追加報酬:50000経験値

  ────────────

────────────────


「うっひゃ~、こりゃ~おったまげたよ」

「このクエスト考えたのぷっぷちゃんでしょ」

「もう絶対に私の前から消えないでね、ぷっぷちゃん」


 私の言葉に反応して、パネル全体が点滅するのサインがあった。


「8歳の時からこんなに甘やかされて育ったら、きっと私の将来は、ぷっぷちゃん無しじゃ生きていけない身体になるから。絶対にいなくならないでね。約束だよ」


 パネル全体が点滅するYESのサインがまたあった。


「知らずに口から出てた言葉が、そのままクエストになるなんて、まだ少し信じられないや」

「ほんとなら、めちゃめちゃ凄い機能だけど、私が自分でいうのもなんだけど結構おっちょこちょいなほうだから、間違ったりしないかちょっと心配。クエスト失敗とかなったりしないよね」


 私の言葉の返事をこまめにピカピカ光って、意思疎通を図ろうとするぷっぷちゃん。

 そんなやりとりをぷっぷちゃんとしていたら、なんだか、ほんわかした気分になってくる。


「悩んでいても時間だけ過ぎていくだけだから、クエストの詳細を見て今すぐできそうなら、チャレンジしてみようか。まずは、詳細ボタンをポチっと押してと!!」


────────────────

  ────詳細項目────  

 ①スキル取得画面から、【再生たまご】SP100【融合たまご】SP20を取得。

 ②【たまご召喚】ツリーから【再生たまご】を選択して召喚する。(0/2)

 ③【たまご召喚】ツリーから【融合たまご】を選択して召喚する。(0/2)

 ④【たまご合成】ツリーから【再生たまご】【融合たまご】を選択して合成する。(0/2)

 ⑤【たまごスキル】ツリーから【たまごマップ】を選択して画面に表示された2人の位置を選択してクリックする。

 ⑥【たまごスキル】ツリーから【たまご転移】を選択して【たまごマップ】上の2人の位置を選択して、2人の項目にそれぞれ【2玉合成たまご】を選択してスキル発動。

 ⑦たまご転移した2玉合成たまごが目標人物と融合する。

 ⑧目標人物に肉体再生効果が1日中(32H)持続する効果が付与される。

  ────────────

────────────────


 現れた詳細は、かなり具体的にパネルの画面にでているけど、結構わかりやすい。

 これなら、簡単に出来そうに見える。

 でも、時間的には、もたもたしてたら結構ギリギリかも。

 たまごBOXの効果確認までは、疑問点を解消したかったけど、それは、昼休憩時に回して、今はパパッとこのクエストをクリアしたほうがいいよね。

 なにより、驚いて唖然としている表情としたルバッカとフェゼラの姿を、遠目からこそこそと眺めながら、1人でほそく笑んでみるのが、なによりのご褒美になりそうだから、さっさと済ませちゃおう。むふふ。


「なになに……、まずは【再生たまご】と【融合たまご】をスキル取得画面から、SPを消費して取得するする……ここは、こうして……」


 私は、詳細項目の説明に沿って作業工程を消化していく。

 その際に、神の御声から数回たまごクエストの達成告知と、たまごクエストの追加告知がされた。

 

「スキルを使用すると、またまた神の御声が鳴るけど、後で確認するから今は放置でごめんちゃい」

「へ─、たまごマップってたまご面の3Dマップだったんだ」

「ルバッカとフェゼラを発見!!やっぱりこの時間だと訓練施設にいたね」

「何これ、拡大縮小も自由自在なんだ。凄い高性能」

「もっと色々遊びたいけど、今は我慢」

「ここをこうして、準備完了!!」


 2人のことを心配するだけで、いままで何も出来なかったのに、こんなに簡単な治療方法で治せるなんて、正直スキルの発動準備段階になっても信じられない気分。

 でも、後はスキル項目画面のスキル項目を押すだけでスキルが発動するから、ここは強気に行くっきゃない。


「それ、スキル発動!!ポチッとな」

「よしっと、それじゃ~成功か?失敗か?判定はどっち!!」

 

 少し時間をおいて、神の御声が私の脳裏に直接届いた。


『お助けたまごクエストを達成、報酬:たまごSP5000、たまごコイン5000玉、50000ギル、50000経験値を獲得、報酬はたまごBOXに収納した』


「いやっふぉ~、クエスト達成!!判定は成功でした~」

「ぷっぷちゃん、ありがとう。ぷっぷちゃんのお陰で何とかなったよ」

「それじゃ~そろそろ時間だろうから、集合場所に向かうとしようか」

「むふふ、ルバッカとフェゼラの2人の驚く顔を見るのが楽しみ♪」


 久しぶりに落ち込んだ顔じゃないの2人の顔が拝めそう。

 どんな顔をしているんだろうと、頭の中で色々想像してみた。

 そのことを考えていると、余計に気持ちが弾んでうきうきしてくる。

 このまま歩いていくのも、時間が掛かりそうだから、レベルアップの確認がてら、軽く走ってみるのもありかも知れない。

 私は、集合地点まで軽く駆け足で林の中を突き進んでいった。

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