第13話 たまごを食べてみた

「もぐもぐ……」

「あっま──い、表面はたまごの白身だけど、中が全然違う」

「もぐもぐ……ゴックン……パクッ」

「中の白身は多分お餅かも…もぐもぐ…一度も食べたことないけど、匂いがそんな感じがする」


 シルアが食べた茹でたまごは、鶏のたまごよりも少し大きく、表面が白身で覆われているが、中身はモチモチした白餅の真ん中に、甘いあんこの入った大福餅だった。


「ゴックン……パクッ」

「もぐもぐ……そのお餅の中心に茶色い練り物が、また甘くて美味しいの」

「こりゃ、間違いなく病み付きになる味」

「それだけは間違いないね…もぐもぐ…」

「ゴックン……あ──、美味しかった」


『【お菓子たまご】を完食した。特殊効果が発動、運が1時間100%UPする』

『たまごクエスト2を達成、報酬:たまごSP10、たまごコイン100を獲得、報酬はたまごBOXに収納、たまごクエストを更新した』


「へー、ぷっぷちゃんは短縮もできるんだ、高性能だな~」


 私がぷっぷちゃんを褒めたら、ぷっぷちゃんが喜んだみたいに画面をピカピカ点滅させた。

 どうやら、ぷっぷちゃんには、自我があるのかもしれない。

 その考察が正しければ、成長して変わっていくぷっぷちゃんを愛でていくのも、なんだか面白そうだね。


「まあ、それはそれとして、また頭の中に沢山ワカメちゃんが湧いちゃった」


(まず、お菓子たまごってなに??)

(運が1時間100%UPって??)

(それに、たまごクエストのルールがわかんない)


 ぷっぷちゃんのバネルを操作してステータスの能力値を表示してみた。


────────────────

  ────検索画面────

レベル:3

HP :3540/40+3500(+5000)

MP :10000/10000(+5000)

力  :3(+5000)

魔力 :10000(+5000)

体力 :15+3500(+5000)

敏捷 :10(+5000)

器用 :10(+5000)

運  :50+(+5000)

  ────────────

────────────────


 レベルが上がってから身体がポカポカしてるなって感覚があったけど、HPゲージの合計が3540と、体力ゲージの合計が3515になっていた。

 【延命耐性】のレベル35がHPの+3500に影響していると思う。

(ちょっと調べてみよう)

 大分なれた手つきでぷっぷちゃんのバネルを操作して検索してみた。


────────────────

  ────検索画面────

【延命耐性】

└[レベル数×100]がHPに加算。

 HPが50%以下になると全属性ダ

 メージが[レベル数/100]減少す

 る。ダメージがHPを超えてもレベ

 ル回数分HPが1残る。

  ────────────

────────────────


 うわ~~、結構やばいスキルだった。まあ、死ににくくなるのは、いいことかもしれないけど、何回も瀕死状態になるのは、どうなんだろう。

 私ってば、今日から生きたゾンビに生まれ変わったような気がする。

 

 体力ゲージの+3500は、【体力強化】のレベル35が原因だね。

 めちゃめちゃアンバランスなステータスだけど、私は一体どこに向かっているのかな~。

 おっと、ぷっぷちゃんの話した通りに運が100%UPしてる。

 でも……その隣の(+5000)は何??わけワカメ!!


「もうお腹一杯だから、ワカメちゃんはこれ以上いらないんだけどな~」


 そこらへんに転がっている小さな石ころを持って力を入れてみたけど、手先がいたくなるだけで、石が砕けたり割れたりする感覚はまったくない。力は3のままだ。

 ちょっと手が痛かったけど、その痛みは直ぐに感じなくなった。

 多分【肉体再生】レベル35がいい仕事をしているようだ。

 でも、結局ステータス画面の横に表示されている(+5000)の謎は解けないままだ。


「これ以上ワカメちゃんが増えすぎると、頭が変になって、ワカメ少女シルアちゃんに変身するかも」

「そうならないためにも、ここは一旦、頭の中を簡単に整理してみようか」


 簡単に疑問点をまとめると…。


・先ほど使用したスキル?の謎を解明。

・たまごSPの意味確認。

・たまごコインの意味確認。

・たまごクエストの仕組み確認。

・たまごBOXの効果確認。

    : 

    :  

(その他もろもろ……)


 他にもいっぱいあるけど、取りあえずは今はこれだけで勘弁してちょうだい。


「わかんないもんは、パパッとしらべるっきゃない」

「そ──れ、検索、検索っと」


 ぷっぷちゃんのバネルを操作して項目を色々いじってみた。


「あれっ、これもスキルツリーなんだ」

「こりゃ、またまた新事実が出てきたぞ」

「なになに……」 


────────────────

  ────検索画面────

├たまご創造◎   Lv 5/ 個数

 ├【✓】生たまご       0

 ├【✓】半熟たまご      0

 ├【✓】茹でたまご      0

 ├【✓】温泉たまご      0

 ├【✓】お菓子たまご     0

 ├【 】お弁当たまご     0

 ├【 】元気たまご      0

 ├【 】満腹たまご      0 

 ├【 】睡眠たまご      0

 ├【 】不眠たまご      0  

 ├【 】目覚ましたまご    0    

 ├【 】浄化たまご      0

 ├【 】爆裂たまご      1

 ├【 】封印たまご      0

 ├【 】霊魂たまご     11

 ├【 】お薬たまご(液状)  0 

 ├【 】丸薬たまご(粒状)  0

 ├【 】粉薬たまご(粉状)  0

 ├【 】妖精たまご      1

 └【 】[    ]      0

  ────────────

────────────────


 このスキルツリーをパッと見た感じでは【たまご創造】で【お菓子たまご】を召喚したのが解った。

 チェック項目が5つあるってことは、たまご創造のレベルも5だから、おそらくレベルと同数の項目をチェックできるってことだと思う。

 試しにチェック項目のある印を押すと、そのチェック項目は【✓】から【 】にできた。反対に【 】から【✓】にすることも簡単に出来てしまった。

 ◎のところを押すとSP挿入画面に切り替わるみたいで、次のレベルまでSPが60必要らしい。

 後は、項目は空白があるから、そこに新しいスキルを当て嵌めていくのかな。


 職業が薬師見習いになってるのに、スキルがないと思ったら、こんなところに隠れてた。

【たまご創造】でお薬が作れるなら、薬師見習いも考えていたよりも辛くなさそうな感じがする。

 お薬を瞬間に出せる人って多分それほど多くはいないだろうから、十分需要がありそうだと思う。

 これがわかっただけで、なんだかテンションが上がってきたかも。

 人の役に立つ職業ってなんかいいよね。

(私の将来はお薬屋さんか~)

(なんだか、かっこよさそう)

 

「次はお菓子たまごを選択してっと、検索!検索!」


 ぷっぷちゃんのバネルを操作してお菓子たまごを検索してみた。

 

────────────────

  ────検索画面──── 

お菓子たまご      0/個数

└固まった白身が薄くコーティングさ

 れているが、中はお菓子が詰まって

 いる。その日によって入っているお

 菓子の種類が変わる。またそれぞれ

 のお菓子を完食した際には、お菓子

 の種類に応じてバフがかかる。

 バフの重ねがけは、同じ種類のお菓

 子は不可。ただし効果時間は巻き戻

 る。種類のちがうお菓子なら重ねが

 けが可能。バフ効果時間もお菓子の

 種類によって変わる。


【たまご変換】でお菓子たまごに変換

 した場合でも、元のたまご特性は消

 滅せずに残る。

  ────────────

────────────────


 日替わりでお菓子の種類が変わるのがちょうステキでうれしい。


 ぷっぷちゃんは、女ごころが良くわかってると思う。


 今日のお菓子は明日になったら内容が変わるらしいから、あとで沢山作り置きしておこう。


(たまごにも、いろいろ種類があるのが、ちょっと興味があるな)


(少しだけ調べてみてもいいよね)


「よし、少しだけ♪少しだけ♪検索!検索!」


 ぷっぷちゃんのバネルを操作して検索してみた。


────────────────

  ────検索画面──── 

生たまご         0/個数

└茹でたり焼いたりしていない、なま

 のままのたまご。

 飲み物の中にたまごの殻を割って身

 を入れて飲むとよい。生のままでも

 食べれるが他の食べ物の突き合わせ

 として食べたほうが食べやすい。


 たまごは召喚時から通常10日後に

 孵化ふかする。

 通常では鶏のひなかえる。

 成鳥になるまで生育期間の延長も可

 能、中の成長に合わせて殻も成長し

 ていく。魔力を多く与える程、生育

 期間が短くなる。


 鮮度維持。腐敗ふはい防止。


 たまご変換で生たまごに変換した場

 合でも、元のたまご特性は消滅せず

 に残る。

  ────────────     

半熟たまご        0/個数

└黄身がトロッとしており、白身が固

 まっている状態のたまご。

 暖かくても、冷たくてもどちらでも

 美味しく食べれる。


 黄身のトロみ具合は調節可能。

 温度調節可能。

 鮮度維持。腐敗ふはい防止。

 たまご変換で半熟たまごに変換し

 た場合でも、元のたまご特性は消滅

 せずに残る。

  ────────────      

茹でたまご        0/個数

└殻のままで茹でたたまご。

 しっかりした食感を楽しみたい人に

 お勧めのたまご。黄身のモサモサし

 た食感と白身のツルンとした食感が

 たまらない。是非ご賞味あれ。


 温度調節可能。

 鮮度維持。腐敗ふはい防止。

【たまご変換】で茹でたまごに変換し

 た場合でも、元のたまご特性は消滅

 せずに残る。

  ────────────           

温泉たまご        0/個数

└黄身も白身も完全に固まっているの

 ではなく粘りがあり、トロっとした

 食感。暖かくても、冷たくてもどち

 らでも美味しく食べれる。この白身

 と黄身のトロッとした食感はやみつ

 きになること間違いなし。

 是非ご賞味あれ。


 温度調節可能。

 鮮度維持。腐敗ふはい防止。

 特殊効果:温泉たまごを水にしばら

 つけると、その土地の魔素の風土に

 合わせた効能のある温泉が沸いてく

 る。


【たまご変換】で温泉たまごに変換し

 た場合でも、元のたまご特性は消滅

 せずに残る。

 ────────────

────────────────

「う~ん、ぷっぷちゃんの解説文を読んだら、また食べたくなってきた」


 お菓子たまごは食べたけど、本物のたまごはまだ試食してない。

 今更ながらにその事実に気づいてしまった。

 複雑な乙女の心境として、そうなると、食べたくなるのを我慢するのは無理そうだ。

 くちが空いてヨダレが垂れそうになるのを、汚れた服の裾でふきふきしながら、自問自答じもんじとうしてみる。

 やっぱり食べたい。喰らいたい。判ってほしいよ。この想い。

 ここはなんとか、食べる言い訳を考えてみようとする私。

 

「少しぐらいならいいよね、食後のデザートは別腹だっていうし」

「純情な乙女はさ、細かいことなんか気にしないし」

「食べなきゃおっぱいも大きくならないもん。だから仕様がない。みんな解ってくれるはず

「それに私、この1ヶ月で大分痩せたから、早く元の躰つきに戻りたいって理由付けがあるんだよね」

「ここは思い切って、試食タイムにしちゃおっか」

「よしと、議決は賛成が過半数、決定よ。パフパフ」

「どうせなら、表示されてるスキルツリーからスキルが発動できるか、試してみよっか」


 私は、ぷっぷちゃんのパネルに表示されたスキルツリーから、まず半熟たまごを選びクリックした。すると突如、何もない空間からき出すようにたまごが現れ、目の前の宙に静止したままの状態でその場に留まる。


 初めて間近に見ても、ビックリする摩訶まか不思議な光景だった。


「やっぱ凄いって、このスキル」


(しかも、ある意味やばかった)

(スキルツリーからでも、スキル発動できたのが証明できたけど……)


 もし、ぷっぷちゃんが他の人にも普通に見えるように出来たと仮定すると、その赤の他人が気絶したり寝てたりする私のスキルを勝手に操作するのも、有りうるかも……。


「うわっ、怖っ、寒気が走った。ぷっぷちゃん、そんなのしたら駄目だからね」


 ぷっぷちゃんのパネルは、ピカッ、ピカッ、点滅した。

 光る時間の感覚から、しないよ、しないよと言いたいのかもしれない。


(まあ、この方法は色々調べながら出来て便利だし)

(画面を見ながら操作するのも、解り易くていいのは確かだから、周りの目を配慮して気をつけて使っていこう)


 他にも、温泉たまごと茹でたまごを選んでクリックしてみると、同じように現れて、そのまま空宙に静止する。


 その宙にある物体は、高級たまごのように見た目が真っ白。匂いはたまごの匂いじゃない。とてもいい匂いがする。匂いの原因は、多分、スキルで作ったたまごだからだろう。


(なんだろ、匂いを言葉にするのは難しいな)


 例えるなら、スッキリした匂い。口の中に入れたらお口がスッキリする感じ。


「私、この匂い、好きかも」

「スキル名は違うけど、3つとも、見た目は同じなんだね」

..キュルキュル..キュルル...キュルルルル..

「やっぱ可愛い見た目、美味しそう。お腹の虫も早く食べたいって」


 独り言を呟いてる間に、脳裏に『神の御声』が割り込んできた。


『たまごクエスト3:たまごスキルを2回使用してみようを達成、報酬:たまごSP20、たまごコイン200を獲得、報酬はたまごBOXに収納、たまごクエストを更新した』

(ありゃりゃ、またクエスト達成したよ)

「これなら、たまご殻むきのスキルを使ったら、また上がりそう。試しにやってみよっか」


 ぷっぷちゃんのパネルを操作して画面上の【たまご殻むき】を3回クリックしてみた。


 すると、たまごの殻は独りでに剥がれていき、その殻は粒子状に細かくなって消えていく。


 目の前には白身が硬いたまごが2玉と、白身が少し透けてゆるゆるのたまごが空中にふわふわと浮かんでいる。


『【たまごの殻】を【たまごBOX】に回収した』

『たまごクエスト4:たまごスキルを3回使用してみようを達成、報酬:たまごSP30、たまごコイン300を獲得、報酬はたまごBOXに収納、たまごクエストを更新した』


「よ──し、順調♪順調♪、まだよくわかんないけど、このクエスト、すぐに達成できていいよね」


「あれっ何これ??」


 空中に浮かんでる3玉のたまごが、突然、小刻みに震えだす。

 震えが少しずつ大きくなって、重力の力に押し負けそうになるのが、なんとなく解る。


(空宙に静止してる時に他のスキルを使ったら駄目みたい)

(やぱい、落ちそう)

(地面に落ちても普通に食べるけど、やっぱ綺麗なままで食べたいの)


 私はその場でたまごの方向に向け、大きくジャンプする。


(届け──、私の乙女の純情)


 ジャンプした体勢で、地面に落ちそうになってる2玉のたまごを別々に掴む。


 両手はたまごを持って塞がった。


 でも、私には口があるの。いっけ──ぇ!!


「あぐっ……もぐもぐ」


 最後の【温泉たまご】は直接口でキャッチした。セーフ。


「旨─い、もぐもぐ、最高」

「はー、トロける~、黄身が濃厚で白身の柔らかさと合わさって美味しい」

「ごっくん」

「こりゃ、ぷっぷちゃんの説明文のいい通り、やみつみになる味だね」

「お肉と一緒に食べたら、きっと最高の組み合わせじゃないかな」


 お次はアツアツ茹でたまごでお口直し。

 それっパクッとな。


「モグモグ、アツアツだから、素材の味が引き出されて旨い」

「白身を噛んだ食感がツルッとしてていいし」

「黄身のモサモサ感とマッチして、これはこれで好きな味、モグモグ、ゴックン」


 完食とほぼ同時に『神の御声』が届いた。


『たまごクエスト5:たまごを2個食べてみようを達成、報酬:たまごSP20、たまごコイン200を獲得、報酬はたまごBOXに収納、たまごクエストを更新した』


(あっまたクエスト達成だ。今日始めたばっかだから、すぐに達成できて気分がいいね)


 ではでは、最後の締め──【半熟たまご】、これをいっちゃおう。


「パク、モグモグ、白身に黄身のトロッとした味が合わさって美味しい」

「茹でたまごとは、また違う味わいになってる、モグモグ」

「黄身の中央が濃厚なドレッシングみたいで、モグモグ、白身の食感によく合う」

「これも、とっても美味しい ゴックン」

「は~~ぁ、美味かった、とっても満足」

「これから、毎日食べられると思うと神様にもっと感謝しなきゃいけないね」


 ぷっぷちゃんのパネルがピカピカ光った。

 なんとなく、褒めて欲しそうな感じがする。


「うふふ、ちゃんとぷっぷちゃんにも、感謝してるよ」 


(あれっそういえば…ぷっぷちゃんって女の子かな?男の子なのかな?)

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