実戦テスト

 なつ様と相談しながら、チャウスを色々と改造した。

 多足歩行戦車 チャウス V2となりました。

 本体は、軽自動車よりも弱冠小さめです。蜘蛛の様な外見で、胴体は二つに分かれています。

 前半部分に、搭乗席があります。なつ様専用です。

 後半部分は、燃料庫です。大容量のEQが積み込まれています。後半部分の外側に、僕が立つ補助シートがあります。

 足は、最初8本でしたが、6本に変更。ホバー機能もあり、高速で低空飛行できます。

 観測用の、小型チャウスを13機搭載。観測は12機で行い、1機は予備です。

 今まで、武装はありませんでしたが、燃料庫の大型化に伴い、設置しました。

 自動追尾型の、拠点防衛用機銃を4門搭載。

 魔物の魔力を感知して、射撃するシステムです。

 EQを消費するタイプと、実弾を消費するタイプを各2門設置しました。EQ消費型は、加速魔法が使えないと判明しています。実弾式は、2倍速の魔法処理がしてあります。

 展開式で、加速砲という武器を設置しました。

 50cmの特殊な弾丸を、射出する装置です。ローター式のピッチングマシンの要領で、鉄の玉を発射します。対龍装備の試作品です。もしもの為の、控えです。

 射出速度は、大砲よりも遅く、拳銃以下です。加速魔法を重ねがけして使用する前提なので、準備に弱冠時間がかかります。

 色々と、思いつきで作った武器なので、これから実戦テストを実行します。

 山野家は、国から委託された迷宮の情報を色々と持っています。

 今回、低レベルで新しい迷宮があるので、それの攻略に同行する事になりました。


「自動追尾システム起動、掃射!」

 チャウス前の機銃が作動します。次々と、狼方の魔物が倒れていきます。

「EQの消費具合は、大丈夫?」

「想定内です。仁君からの供給テストも良好ですよ、残念だけど・・・」

 なつ様は、悲しそうにそういいます。今回の改良で、僕の魔力を直接チャウスに供給できないか、色々とテストしています。

 返還率は低いですが、直接EQにするシステムをなつ様が開発したので、取り付けてあります。ただ、僕の魔力を自分で吸収したいなつ様は、色々と板ばさみなってます。

「実弾の方も、問題ないですね」

「自動追尾システムも、問題ありません」

「これで、防衛体制は良くなった」

 敵が多すぎて、対処できなくても多少は安全になりました。

「前方に、敵集団があります」

「対処できそう?」

「今までは不安でしたが、今の状態なら大丈夫」

「試せる時に、試しておこう。こういう機会は、中々無い」

「了解」

 この迷宮の中には、僕達だけでなく、山野家の実戦部隊も同行している。

 こちらがおまけの予定が、メインになって戦闘しています。

 実戦テストなので、問題ないのです。こちらが危険になれば、支援するとのことなので、その言葉を信じます。

「どっちも向いても、敵だらけ!」

 魔物の群に突っ込むと、途端に敵が押し寄せてきました。

「仁君、4時の方向にレーザーをお願いします」

「了解」

 なつ様の指示に従い、敵をを掃討していきます。指示は的確なので、落ち着いて対処するだけです。

 機銃の掃討もあり、魔物の集団は次々と消えてきます。

「大型の魔獣が接近」

 それは、始めて見るタイプの魔物で、サイの様な、一目で硬いとわかる装甲を身にまとった魔物です。大型トラックほどの巨体です。

「この迷宮の、ボスみたいです」

 迷宮には、ボスがいて、それを討伐すれば消えるみたいです。

「ボスって、複数いるの?」

「迷宮によって、色々です」

 サイの様な魔物は、視ただけで5体います。

「視界にあるのが全て?」

「観測結果は、5体です」

「マグナムで、大丈夫かな?」

「加速砲のテストは?」

「目が無ければ、やりたいけど今は止めておく」

 一緒に同行している部隊、何となく嫌な感じがする。

「あの部隊のデータ、取れる?」

「気になります?」

「銃口、何度か僕たちに向いていた」

 気配察知のレベルは低いけど、ある程度のものは感じられます。

 なつ様に危害を加える相手は見逃せないので、それに対する反応は訓練しています。

 魔物は、基本的に僕達を狙う。ピンポイントに、なつ様だけを銃口は狙っていた。

「あの部隊は、はる兄上が推薦した部隊です」

「信頼できる?」

「はる兄上様は。信頼できます。私のために、色々と考えてくれる兄上です」

(考えすぎて、色々と困るけど嬉しい)

 何となく、なつ様の心の声が聞こえた気がします。

 とにかく、巨大な獣を、マグナムで仕留めます。

 硬そうな鎧も、問題なく倒せました。命中さえすれば、倒す事ができるみたいです。

「魔物の反応は?」

「在りません」

「迷宮は、これで消えるの?」

「魔石を回収すれば、自然に消えるみたいです」

「あれは?」

「戦闘強化装甲です」

「確かに、ロボットだね」

 同行していた部隊の中に、ロボットがいます。5メートルほどの、上半身だけの人型ロボット。下半身は、戦車になっています。タンクロボです。

「ずっといたの?」

「光学迷彩です」

「解けたの?」

「魔物がいない場合は、光学迷彩を解除するようになっています」

「こちらに、銃口向いてるよね?」

「あの部隊、プレイヤー排斥主義の疑惑があるみたいです」

「それを、なつ様に同行させるの、お兄さんは?」

「はる兄上様なら、やるかもしれない」

「色々と、凄い人だね」

「困ったものです」

 その直後、砲弾が命中します。戦闘強化装甲が、こちらを攻撃してきました。

「無駄です」

 防御の魔法陣が出現して、攻撃を防ぎます。核攻撃を防げると、なつ様は言いました。この程度では、問題ないみたいです。防御のテストも出来ています。

「これも、計算してたのかな?」

「おそらく」

 加速砲の準備をします。

「加速魔法、準備良いですか?」

「重ねがけを実行中」

 魔力が、物凄い量で消費されていきます。途中、回復するのを待ちながら、追加で魔法を発動します。

 一発準備する荷に、1分近く時間が必要です。

 準備が終わります。相手は、攻撃の手を緩めていません。

 歩兵も接近して、こちらに攻撃をしています。

 魔物意外との戦闘は、これが初めてです。

 かなり、緊張します。色々と、覚悟を決める必要があります。

 思考が乱れると、準備している魔法に影響します。覚悟を決めます。

「準備完了、なつ様、引鉄をこちらに」

 火器管制は、なつ様の役割ですが、これは僕の役目です。

「嫌です」

 ですが、なつ様は拒絶します。

 そして、次の瞬間加速砲は解き放たれました。覚悟を、決めましょう。

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