第11話 2年生の悪魔

「この迷宮にしましょう」

「物足りなくないですか?」

「最初だから、これくらいが良いのでは?」

「私達のレベルだと、もう一つ上でも良いのでは?」

「悩みますね」

 新学期になり、僕達は2年生になった。

 ここからは、迷宮攻略を中心とした生活となる。

 学校が管理している迷宮を、順次攻略していく事になる。

 教師が、生徒のレベルやスキルを考慮して、適度に割り振っていく。僕の場合は、なつ様とコンビを組む事は決まっている。その上で、適切な迷宮ということで、3つの迷宮を提示されている。

 この学校、生徒の自主性を重視するといって、介入は最低限なのです。

 プレイヤーという存在、確保しながら飼い殺している感じです。

「少し良いかな?」

 相談をしていると、話かけられました。実は今、訓練の最中でもあります。

 なつ様を背負って、訓練場を走っています。

 その僕たちに話しかけてくるとは、空気読めていません。

「今、訓練中ですけど?」

「君達と話すのは、こう言う時でないと機会がないからね」

 話しかけてきたのは、3年生です。訓練着の色が、学年によってちがうので一目瞭然です。見かけた事はありますが、話した事はありません。

「それで、用件は?」

 厄介ごとは、早く終わらせるに限ります。

「君達は、何処のギルドに所属するつもりかな?」

「ギルドは、無所属の予定です」

 2年生になると、ギルドというシステムが稼動します。上級生と混合で、一つの組織を作ります。

 お互いに助け合うという理念の下結成されますが、ほとんどは色々と欲にまみれた存在です。

「なら、僕のギルドに入らないかな?」

「何処にも、所属するつもりは無いです」

 僕の代わりに、なつ様が返事をしたけど、不機嫌というのを隠さないストレートな返事です。

「ヤマノ重工の力があっても、ここでギルドを体験するのは今後のためになるはずだ」

「家の事は関係ない。仁君とのひと時を邪魔しないで」

 なつ様が不機嫌な理由は、邪魔された事だったみたいです。僕も同じです。

「僕のギルドには、護光財団の一族の関係者も多いです。損は無いです」

「だったら。その関係者が来れば良い」

「だから、僕が来ました。僕の名前は、後藤真理。護光財団分家である、後藤家の三男です」

「知ってる?」

「護光の後藤家なら、該当あります。三男は、真理。昨年度迷宮攻略数2、3年生での序列は5です」

「攻略数2で、学年5位なの?」

「現時点の3年生は、上位4人が異常です。仁君には及びませんが、それなりの戦闘力があります」

「この人は、それより下か・・・」

「組む必要ありません。護光のギルドは、人数が多いですが、戦力は中級です」

「メリットないね」

「支援師がいないギルドです。私目当てですね」

「この学校、支援師少ないよね?」

「元々、プレイヤーは選びません。前に出て突撃する人が多いです」

「死亡率が減らない原因だよね」

「ぼ、僕を無視するな!」

 後ろのほうで、何か叫んでいます。今は訓練中。なつ様を抱えて走っている僕に、ついて来れないようでは駄目です。兵士の仕事は走る事と、どこかで聞いた事がある気がします。

「仁君、前から来ます」

「面倒」

 なつ様は、何もしていないようで監視をしています。魔道具を使い、常時周辺を監視しているのです。

「真理の誘いを断るのは当然。軟弱ものより、俺と手を組むべき!」

 やって来たのは、3年生の4人組みです。この連中は、有名です。

「東西南北四天王、ここに参上!」

 道を塞がれたので、仕方なく止まります。3年生の上位4人は、仲が良く、四天王を名乗っている事で有名です。

「僕達が入ると、四天王ではなくなりますよ?」

「軟弱ものは不要。吾らが所望するは、その女子のみ」

 四天王の一人は、変な言葉使いです。

「銃使いなど、吾らには不要」

「支援師のみ所望する」

 四天王全員が、変な人でした。嫌なやつと思った真理が、気の毒に思えるぐらい、上の年代は変人がいます。

「仁君の事を、悪くいう人は嫌い。だから、あなたたちへは協力しない」

「支援師は、吾らほどの強者と手を組むべき」

「仁君より、弱いのに?」

「吾らみな、レベル50を超える強者なり」

 僕となつ様のレベルは30。これは僕達の学年では最高。他の子の平均レベルは20。迷宮に入らなくても、ステータスやスキルの関係でレベルが上昇する事がある。

 僕の場合は、魔力の量が上がった時に、レベルも上がってしまいました。なつ様は、支援錬金術を使った結果です。30という数字は、偶然同じ数字になったと思ったのですが、年齢によって上限がある痛いです。

 卒業する年齢になれば、レベル表示の上限は介抱されます。

「拒否するなら、力ずくでも・・・」

「力ずくですか?」

 言葉に、魔力を込めて問いただす。

「誰が、誰を、力ずくで、どうするというのですか?」

 僕のスキル、なぜか存在する威圧というもの。これは、魔力の大きさで相手を威圧するものでした。ある程度の魔力量があると、自然と覚えるみたいです。現在のスキルレベルは10。

 この威圧を、耐性の無い子につかうと、気絶したり失禁する恐れがあります。

 この惨劇の詳細は、可哀想なので、何も言いません。秘密にしておいたほうが、色々と役に立ちますからね。

 大きさと、回復速度の影響で濃密になった魔力による威圧は、先輩たちに恐れを植え付けたみたいです。

 今年の2年生には悪魔がいる。

 自分達の失敗を誤魔化す為に、先輩たちは大げさに触れ回りました。

 学校中に噂は広まり、僕は2年生の悪魔と呼ばれるようになっていました。

 納得いかない出来事だけど、この事が後で良き出来事に繋がったので、災い転じて福となすと、いうのか悩みます。

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