第9話 実戦終わって

 あれは、獣ではない・・・。

 視界の隅に収めた光景。三郎の死ぬ間際の表情。絶望に染まり、消えていく命。

 それを見て、残酷に笑う獣。

 ただの獣が見せる、顔ではない。

 僕は、何をしていたのだろう?

 自分の準備だけをして、敵のことを学んでいない事に、今更気づいた。

 当たり前のことを、していなかった準備不測を、後悔しています。

「結局、あれは何だろう?」

 端末を操作して、情報お調べます。

「あれは、憎悪の化身」

「ん?」

 後ろから声がします。部屋の中は誰もいないはず。

「なつ様?」

「はい」

 なぜか、僕のベットの中に、なつ様がいます。顔だけ、ひょこんと出しています。

「何をやっているのですか?」

「えっと、恥ずかしくて・・・」

 話を聞くと、僕を心配し様子を見に来たそうです。存在除去で。

 普通にこれば良いのに、様子を見るだけのつもりだったそうです。ただ。僕が必死に調べものをしているので、つい声をかけてしまったそうです。ベットに潜り込んでから、ですが・・・。

「仕方ないので、そのままで良いです。魔物に関して教えてください」

「あれは、憎悪の化身。生きる存在を、殺すだけの存在です」

「僕達が戦う相手は、そう言う存在だと?」

「そうです。狼に見えるけど、魔物は別の存在です」

「鑑定とかで、能力を調べる事は出来るの?」

「その手の能力は、在りません」

「外見が似ているなら、能力は同じと考えても良いの?」

「それに関しては、そう思われています」

「特殊なスキルをもった個体が、突然出現する事は?」

「過去のデータによると、かなりの頻度であります」

 色々と、気になる事を聞いて見ます。なつ様色々詳しいです。

「人類は、勝てるのかな?」

「負けたら、終わりです」

「そっか・・・」

 そうですよね。負けたら終わり。焼きついた、三郎の最後。ああいう道を辿るだけ。

「させませんよ」

「ん?」

「仁君を、終わりにはさせません」

 なつ様が、断言します。

「何でそこまで?」

「だって、まだ責任とって貰ってないし・・・」

 もにょもにょと、ベット中でなつ様がもだえています。

「それだけ?」

「仁君の魔力、また格段に美味しくなったの?何で?不思議だよ、あれが味わえないなんて、この夜の終わりなんだよ、しっかりして!」

 こっちが本命みたいです。この子、大丈夫かと少し不安になります。

「僕の魔力が目当てなんだね」

「そうよ!」

 断言されてしまいました。

「失っては駄目、人類の希望なの!」

 話のスケールが、大きくなりすぎです。

「山野家には、人類を守るという目的があるの」

「ヤマの重工として?」

「12艦隊末裔として」

「12艦隊?」

「覚えておいてください。時期が来たら、話します」

「まだ、次期ではないと?」

「その時を、待ちます」

「ありがとう」

「僕にできる事、何かある?」

「強くなって欲しい。生き残る為に」

「それは、最初からの目標です」

「もっと、もっと、です」

「もっと、もっと、ですか・・・」

「協力するよ、だから、こっちにきてください」

「仕方ありませんね」

 ベットのふちに、腰掛けます。

「えいっ!」

 後ろから、なつ様が抱き着いてきます。残念ながら、お姿は見えません。

「魔力吸収!」

 いつもとちがう掛け声で、魔力が吸い取られていきます。あっという間にゼロになり、気絶します。

 この瞬間が、寂しいくて、後ろの存在に安らぎを感じてしまいました。


「で、何かいう事は?」

「惜しいので、止められなくなりました。反省はしてるけど、後悔はしてないです」

 気を失っている間に、ベットの中に引きずり込まれていました。ぬくぬくで、あったかい何かが側にいます。背中越しなので、姿は確認できません。

 時計を見ると、夜明け前。回復した瞬間を狙い、すぐに吸収ということを、繰り返されたみたいです。

 そこまで、美味しいのでしょうか?

 逆に、これだけの量を吸収して、なつ様大丈夫なの?

「なつ様、大丈夫?」

「大丈夫です、大丈夫、これだけの魔力があれば、きっと、大丈夫・・・」

 ここにきて、気づきます。なつ様も、怖かったんだと、

「振り向いたら、駄目ですよ」

「集めた、魔力は大丈夫なの?」

「すぐにEQに変換して、空間収納に入れていあります。この量なら、我が軍は10年は戦えます」

「何で、そのネタを知っているの?」

「兄上様達が、色々と趣味で集めています」

「それ、異世界の文化だよね?」

「それを再現できる、スキルがあります」

「それは、怖いね」

「怖いですよ、プレイヤーは・・・」

 自分でも、これは無いと思うほど、魔力が増えています。これは、怖いです。

「なつ様は、僕が怖い?」

「仁君は、私が怖い?」


「「怖い」」


 お互いの声が、重なります。

「怖くならないよう、理解する?」

「そうしましょう」

 色々と話あう。そこから始めます。この状態だと、色々と誤解されそうだけど、まだ健全ですよ?

 授業は、一日休みましたけど、有意義な日を過ごせたと思います。


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