第7話 実戦 その1

 迷宮探索が始まりました。

 今回は、4人でパーティを組んでの攻略です。

 僕は、なつ様と最初に組みました。ある程度、希望が通る仕組みなので、スムーズに出来ました。

 案の定、なつ様を狙っていた人たちから反感を買いましたが、気にしない事にしました。彼女から受ける恩恵は、予想以上でした。

 逆に、嫌われないように注意します。

 残りの二人は、なつ様の護衛です。流石ヤマノ重工。同い年の子供の護衛を用意していました。

 実際には、訓練中の子供ですが、幼い時から訓練を受けているので、クラスの中で頭一つ飛び出した実力を持っています。

 加藤 一と佐藤 三郎。山野家の分家の人間らしいです。

 この二人からの風当たりもきついです。僕の事を、あまり良く思っていないのが分ります。

 この辺は、頑張って認めてもらうしかありません。


「迷宮というのは不思議な空間で、何が起こるかわからない」

 説明しているのは、もう1人のパーティメンバーの矢藤 奏先輩です。

 この学校の6年生。6年生は、引率など後輩の指導をする事も多いみたいです。最初の迷宮探索は、6年生が引率する決まりみたいです。

「目安として、外からおよその敵の強さは測定できる」

 それまでには、かなりの犠牲があったみたいです。

「一度攻略を開始した迷宮は、クリアまで閉じられる事は無い。ただし、途中で迷宮から出る事は可能だ」

 色々と、迷宮に関しての基礎を学ぶ。


・迷宮へとは転送の魔法陣から入る、

・途中で出る為には、スタート地点まで戻る必要がある。

・迷宮の中が、草原や廃墟、未来都市という場所まで色々。

・一度開始された迷宮は、クリアされるまで閉じない。これを利用して、ある程度のレベルの迷宮はそのまま訓練として利用される。

・魔物は、ある程度時間が過ぎれば増殖する。

・迷宮を攻略しないままにしておくと、暴走して魔物が溢れる。

・魔物の暴走で、大陸が滅んだ事もある。

・魔物は、基本的に獣、鬼、機械の3種類。

・魔物は倒すと魔石を残す。また、時々魔道具を残す。

・迷宮の中には、魔道具が落ちている事もある。

・迷宮の中には、食材となる物資が豊富にあるものもある。

・迷宮内で発見したものは、発見したものに権利がある。

・人類同士での殺し合いは、基本的に禁止されている。


 他にも、色々と説明を受けました。

 矢藤先輩は、色々と丁寧に教えてくれました。レベル40の戦士でした。

 戦士と言うのは、戦い方の目安で、職業があるという分けではありません。

 前衛で、剣を使って戦います。

 一と三郎は、盾使い。なつ様の護衛なので、二人とも防御重視の戦闘方針らしいです。

 なつ様は、支援錬金術師は裏の顔。観測師と表向きはなっています。色々な道具を使い、索敵をする係りです。

 僕は、銃士。銃を使って戦闘をします。そう名乗った時、矢藤先輩は嫌な顔をしました。近接重視の時代です。仕方ないでしょう。

 今日入る迷宮は、獣の迷宮です。この迷宮は特殊で、訓練のために攻略しないで維持されています。

 中には、狼が群になって徘徊しています。

 装備に関しては、各自準備する事になっています。矢藤先輩は、戦況強化服で身を固めています。学校で支給されている初期のものよりも、数段上の装備です。

 一と三郎は、ヤマの重工製の、戦闘強化服です。学校で支給されたものよりも、防御に優れたものです。

 二人とも、中型の盾を持っている。武器は、警棒ですね。魔法を発動できる杖の役割も持っていそうです。

 僕の装備は、支給された戦闘強化服です。後は、ハンドガンが2丁。なつ様から貰った、腕時計型空間保管庫に、弾薬が1万発いれてあります。弾切れの心配は、今の所心配ないです。ただ、リロードが不安です。

 練習はしましたが、実戦で落ちついてできるかが、最大の心配事です。

 なつ様は、特殊な小型の機械に乗っています。

 多足歩行戦車の小型版で、支援師専用の機体です。小型の伝道自動車の様なもので、タイヤの代わりに8本の足があります。

 この機体はチャウスというらしいです。なつ様専用の機体で、探知能力はかなり優れています。

 錬金術で、色々と改造してあると聞きました。

「なつ様、操縦できるの?」

「訓練は、小さな時からしてますよ。この子は、優秀だから、仁君のサポートは任せてください」

 無線で、会話をしています。ヘルメットをかぶっているので、フェイスガードの部分に映像が映し出されています。

「まずは、俺が先行する」

 迷宮に入ると、矢藤先輩が前に出ます。

 迷宮の中は、草原でした。視界の隅に、簡易レーダーが映し出されます。チャウスからのデータが、送られているみたいです。

「フォーメーションは、山野を中心に、俺が先行、左右に一と三郎、後方に仁だ」

 基本的な配置だと思います。

「矢等先輩、良いですか?」

「どうした、なつ」

「配置ですが、仁君を、チャウスの上に乗ってもらっても良いですか?」

「上?」

「後ろに、立てる場所があります。そこにいてもらっても良いですか?」

「役に立つのか?」

「砲台としてなら、その場所の方が良いです」

「なら、任せる。仁はそのように」

「了解」

 言われるまま、チャウスの荷台部分に立ちます。ゆれると思ったのですが、意外と大丈夫でした。

「仁君、時々魔力吸収するからよろしく」

「それが目的でしたか・・・」

 秘匿している事なので、近くにいたほうが都合が良いです。

「あの二人は、知っているのか?」

「知らないはず」

「その辺は、上手くやってね。魔力は、1回に1万までなら許可無くやっても大丈夫。連続するのは、止めてもらいたい」

「了解」

「最低でも、5分は間隔をあけてくれ」

「5分?」

 1万を回復するのに、5分は異常ですよ。5分もかからずに、全快するけど、それくらいの余裕は欲しいです。

「頼む」

「了解です」

 何か言いたかったみたいですが、会話わ終わりです。レーダーに敵の反応。

「来るぞっ!」

 狼と思われる魔物の群が接近中です。確認できる数は30.

「これ、撃っても良いのかな?」

「先制攻撃は、俺がやる。その後、各自の判断で攻撃しろ!」

 そう言いながら、突進する先輩。魔力を使って、身体強化をして、高速で突っ込んでいきます。

 その先輩に続いて、一と三郎が突っ込んで生きます。

 あれ、あの二人はなつ様の護衛では?

 弱冠呆れつつ、こちらも戦闘の準備をします。初めての実戦は、こうして始まりました。

 卒業率50%という現実。僕はこれを実感する事になります。



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