第4話 衣服




 家で読書。

 家で映画。

 外で読書。

 外で散歩。


 さてさてどうするか。

 

 朝食を食べ終えては、新聞で気になった記事をメモ帳に忘れずに書き残し、自室に戻っては、これからどう過ごすかを思案する。

 そんなさなか。




 落雁のように仄かに口の中をざらつかせる、お香の匂い。

 白虎香。

 奥底に甘みが控える薯蕷饅頭に似ているように思える、伽羅をベースにスパイシーで神秘的な香り。

 光沢をもつ青と白の虹色八寸帯に、絣模様と藍色の紬着物。



 ふっと。

 野原相棒様の匂いと姿が脳裏によぎって、うずうずと足指がむずがゆくなる。



 おしゃれをして、でかけたくなる。



 面倒と思う前に即行動。

 いつもなら普段着ででかけるのだが、今日だけは変革だ。

 長そでで足首まで隠れる若草色のサックドレスに着替えて、真っ白なつば広ハットを被る。

 


 いつもなら本を借りるだけだけれど。

 今日は図書館で映画鑑賞としゃれこもうじゃないか。



 冷蔵庫に貼ってあった図書館のパンフレットを持って、カラメル色のショルダーバッグを肩からぶら下げて、いざ。







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