第5話 図書館




 商店街の終点地。

 三階建てのコンクリート造りで、間取りがゆったりとしているその建物には、図書館のほかに、音楽・演劇練習場、映像室、託児所、証明書コーナー、談話室、ベーカリーコーナーがあった。

 平日は学習部屋として使われる映像室で、土日祝日限定で無料、定員三十五名、九時、十一時、十四時と一日に三回、昔の映画が別々に上映される。

 観ようと思っている映画は、見たような気がするアニメ映画だった。


 まだ十一時まで、四十五分ある。

 休日はそこそこ人が多いのだが、今日はまばらだ。早めに行って席取りをしなくても大丈夫だろう。

 時間つぶしと、借りられる本探索にと、図書館へと向かった。

 

 二階建ての図書館の一階に所蔵されているのは、文芸、児童書、絵本、紙芝居、雑誌、産業関連、語学関連。

 二階に所蔵されているのは、哲学、歴史、技術、社会科学、美術。


 一階には貸出カウンターと読めるスペースが設けられているが、二階にはない。

 だからだろうか。

 二階は一階よりも、いっそう、静かで、図書館独特の匂いがただよっていた。


 少しだけ焼いたキャラメルに、シナモンを混ぜたような匂い。

 異空間であることを際立たせる。

 


 

 歴史の本棚を上から右順に題名だけなぞって、興味を持ったものだけ手に取って、目次を読む。

 読みたいと思った本を一冊見つけたら借りる。

 あれもこれもと何冊も借りても二週間以内に読み切れないのは承知済み。

 だから、見つけたら本棚は見ない。


 

 すんなりと見つけられたと思ったら、思う以上に時間がかかっていたらしい。

 上映五分前になっていて、少し長い廊下を進んで下に降りる。


 靴音は全くしなかった。








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