後に、アモルドは1冊の本を出版した。

 宇宙での治安維持に一定の影響力を持つ宇宙警察、その大幹部の男の書いたそれは主に電子媒体で世界、つまりは人類の暮らす宇宙の範囲内で広く読まれることになった。

 その本にはアビスという女性に最初期から敵対して関わり、どのようにして主に負け戦から生き残ってきたのか、そして利用されたのかがつぶさに書かれていた。

 敵からは悪魔、味方からは神。

 アビスはそんな風にも呼ばれている。

 アビスが今も生きているかはわからない。

 風の噂では全人格をAI化して永遠の命を得たとか眉唾ものの話もあるが、相変わらずの辣腕らつわんぶりが彼女の管理下では発揮されている。

 結局宇宙海賊は相当目減りしたし、各社の争いもほぼ終焉しゅうえんを迎えた。



 宇宙は平和になったのだが――それが、ただ楽しみを得たかったがための少女の遊びが発端だったのは、もはや誰にでもどうでも良いことだった。

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アビス・イン・アビス 書い人(かいと)@三〇年寝太郎 @kait39

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