歪(ひず)み

 嫌がらせもとい、実質的な戦勝祝いもそこそこにアビスは時間差会議にて相手宇宙警察の戦況を報告した。

 表向きはドローンのみでやり込めたことになっているので他の幹部からも「今回の宇宙警察は目障りでなく、簡単に倒せそうだ」と増援への打診が来たのである。

 近しいマルド幹部は静観を決め込んでいるようだった。

 しかし、10AU、20AUとやや離れた他の幹部二名がネオ・エデン社の強硬派の一部と結託・契約し大規模戦線で宇宙警察を粉砕すべく動き出してくれた。

「先行強行偵察には感謝する。

 おかげで簡単に撃破できそうだ」

 気軽に兵力を差し向ける予定の幹部がそう伝えてきた。

「自分には別件があるので、助力は出来ないものと考えてください」

 アビスの言葉に、特に戦線を構築中の幹部二名がいぶかしむ。

「他の治安維持か」

「ええ。近辺で宇宙海賊の動きが活発でして。

 大規模制圧作戦を行う予定です」

 大嘘だったが、遠距離の動きには弱い幹部には分からなかったようだ。

「さて、陽動は開始された。

 賭けに出るぞ。

 フェイト、秘匿ひとく回線をマルド氏に繋げ」

「ノア社がより強大になるのなら、社長でも容赦はしない。

 面白いね」

 フェイトが意味深な言葉で、アビスの意図を汲んでみせる。

 離反のときであった。

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