ドローン・ウォーズ

 アビスが最も重要視したのはドローンの危機管理だった。

 次いで、自身の体調の管理か。 

 アビスの駆る『エリゴール』はドローンの支配する宙域の中枢後方。

 愛猫のフェイトが目を回しながら戦線を管理し、アビスも大急ぎで他のAIと『相談』しつつ状況を読む。

「ワープ妨害ドローン、撒くよー!」

 フェイトがそう言う。

 ドローン輸送艦の1つが戦線の一地域を『支配』する。

 ワープ移動を制限された宇宙警察の艦隊は悲鳴を上げ、その予想の通りに核の炎に飲まれ消えていった。


「本当にドローンだけなのか……?

 信じられん」

 攻城戦艦を駆るアモルドは、防壁で敵の攻撃をシャットアウトしながら、周辺のドローンが存在する宙域に核砲弾などを撃ち込んでいく。

『こちら、第一艦隊!

 離脱する!!』

「開戦からまだ10分だぞ!!」

 アモルドはさすがに文句を言った。

 どうにも短い戦争になりそうだ。

 相手は威力偵察のつもりだろうが、いびつな危険を察知した主力部隊が早々に撤退したのだから、あのアビスとやらは大喜びだろう。

「くそ! どこかにドローンを管理しているやつが居るはずだ!!

 こちらアモルド、強硬索敵を行う!!」 

 混乱した戦線で、止めるものは居なかった。

 

「攻城戦艦級が馬鹿正直にこっちに向かっていってるよー」

「無視しろ。戦場で馬鹿は勝手に死ぬ」

 そんなやり取りがフェイトとアビスであったが、しかし馬鹿のように硬いのもアモルドの戦艦の長所だった。

 攻撃をシャットアウトしつつ、攻城戦艦1艦が単独で突っ込んで行く。

「そろそろ撤退するか。敵の応戦能力もたかが知れているし……。

 ただ、あの攻城戦艦は見覚えのある設計だな」

「ジレット元幹部の所有していたカプセルドのふねだね」 

「カプセルドが乗っているわけか。

 落としておいて損はない。後退しつつ、ワープ妨害。相手の攻撃時にバリアの隙が生まれるはずだ。その瞬間を測定しろ」

「AIをこき使うねえ」


 バリアの隙間をぬった攻撃で、砲の一部が吹き飛んだアモルドの攻城戦艦だったが、戦う意思は全く砕けなかった。

 攻城戦艦のAIの無機質な声と共に、逆探知を行っていく。

 敵の微妙な癖、性格などから位置を割り出すのは困難に見えるが、ジレットの設計したその戦艦に載せられたその演算装置は優秀だった。

 レールガンを撃ち込んでやりたかったが、AIが自動で攻撃を制限する。

 まだ狙われているようで、この状況で攻撃をすれば自艦が吹き飛ばされる危険があるようだ。

 にらみ合いが続く。

 アモルドは移動を続けながら、他の部隊と連携を取り合う。

『アモルド、それ以上の損耗は許容し難い。

 撤退しろ!!』

 そう艦載機母艦から指令が降りた。

「了解……!!」

 攻城戦艦は、核融合リアクターが悲鳴を上げつつある。電力キャパシタはワープする程度が限界のようだ。


「攻城戦艦が消えたね。

 ワープした模様!」

 フェイトの報告に、

「潮時だな」

 と端的に応じるアビス。

 アビスのエリゴールもワープ機能を使い、ドローン輸送艦も追随するようにドローンを収容して戦線から撤退していった。

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