提携という名の暗躍

 『ネオ・エデン社』は確かに超が付くほどの大企業ではあるが、『ノア・テクノロジーズ』が暗躍できないこともない。

 むしろ、大企業だからこそ付け入るすきは多い。

 それを見逃さないノア本社に各幹部たちではなかった。

 アビスもネオ社周辺宙域に居る海賊艦隊から輸送船団を護衛するなどの仕事を部下に任せながら、情報を集めていた。

 アビスはノア社の掌握しょうあくを目論んでいたが、これもまた遊びの範疇はんちゅうだった。

 必要とあらば手練手管てれんてくだを使っての、ネオ社の弱体化も行うだろう。

 ノア社の社長からしても、ノア社がさらなる軍拡や経済規模の拡張を行うためにネオ社を素知らぬ顔で弱体化させるのは喜ばしいことのはずだった。

 アビスは深宇宙のさらに奥深くに入り込み、電子データの海に溶け込んでいく。


「『エリゴール』の進捗は聞いている。予定通り、接続シミュレーションを行う」

 本来の中身とは異なる、偽装した整備・研究ドックに入ったアビスが単刀直入に部下の技術者たちにそう言った。

「はっ。

 もうしばらく調整に時間がかかりますが……」

 小柄な少女相手だが、同時に大幹部、このステーションの主である。

 アビスを除く場の全員が緊張していた。

「端末を見せるといい」

「わかりました。こちらです」

 1Gに調整されたステーション内を歩くアビス。

 歩くだけなので息切れはしないが、息切れを意識する程度には運動量が不足しているようだった。

 疲れは見せずに、はっきりとした声を出す。

「最終調整のみだな。

 私がやってしまおう」

 アビスは、なにやら高速でキーボードのタイプを走らせる。

 直接プログラムをいじっているのだ。

 ものの二〇分弱でプログラムが完成し、驚嘆する技術者を尻目にアビスは銀色のカプセルに乗り込んだ。 

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