プロジェクト『エリゴール』

 アビスが旧ジレット・ステーションを、同じく幹部のマルドと管理する手続きを終えた。

 見ようによっては宝の山に見えなくもない。

 強制収容された動物に奴隷、治験者から生み出された技術的財宝の山である。

 その前後から、アビス・ステーション本部では極秘の計画が発動していた。

 計画名は『エリゴール』。

 悪魔の一柱ひとばしらの名を冠する特殊な艦船の設計プロジェクトだった。

 アビスが練る計画を成功させるためには、この『エリゴール』の建造を含め多数の計略が必要だった。

「僕は、アビスの力の拡充のために作られた知性体だからね。

 実のところ、ノア社に誠意を尽くす必要はなかったりもする。それだけの力も持っていないはずだけど」

 愛猫あいびょうのフェイトはそう言った。

 実際、何らかの秘匿通信をノア本社に送る能力などはないらしい。

「悪巧みがやりたい放題。

 さて、頑張るか」

 気軽な声で、幾重もの計画と罠を張っていくアビスだった。

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