孤軍

 ノア本社に攻め込むアモルドたち。

 本部から何も連絡が来ないのは不安だったが、任務を遂行するしかないと踏んでいた。

 指揮権のトップが隠密行動でぬくぬくするのは気分が良くなかったが、まさかクローク機能を解除するわけにもいかない。

 アモルドは核による被害を抑えるため、部隊を幾つかに分けて正面から攻め入ることにした。

『こちらはノア・テクノロジーズの代表だ。

 ゼート・Dー959のステーションはこちらが壊滅させた』

 ノア本社の宇宙ステーションから発信されたオープンチャンネルだ。

 白髪に白ひげの老練な紳士が映像付きで声を発している。

 下手な脅しを! 脅しにしても悪い冗談だ、そうアモルドは考えた。

「おそらくは悪あがきだ。勝てる戦いだぞ」

 アモルドは味方艦を鼓舞こぶし、さらなる戦いにおもむこうとする。

『これが粉砕したステーションの映像だ。

 さらに、私の手の者が貴官らを攻撃するだろう』

 映し出された衝撃的な映像――粉砕されてはいるが、よく見知った宇宙警察のステーションのはずだった。

「馬鹿な!! フェイクだ!」

 アモルドは叫ぶ。

 十秒ほど経ってから、返答が来る。

『ジレットも始末できたことだし、これ以上場を荒らさないのであれば、貴官らを見逃してやっても良い。

 こちらとしても、余計な損耗は避けたいのでね』

 アモルドはノア本社と戦う危険性と使命感を天秤にかけた。

 本部からの報がない以上、現場の指揮権は自身に委ねられている。

 最後は多少の保身と、味方への保全が勝った。

「一旦撤退する! 全艦、反転せよ!!

 離脱域まで達し次第、ゼート・Dー959まで戻るぞ!」

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