エピローグ アビスの計画

 アビスの放った『カプセルド・パイロット』の華麗なる戦い。

 その成果により、各ノア社幹部の宇宙ステーションの戦線は特に宇宙警察の側が混乱し、彼らは無様にも勝手に撤退していった。

「宇宙ステーションの陥落とジレットの始末。

 ジレット・ステーションの奪還。

 各ステーションの防衛!

 万事うまく行ったといえるだろう。

 アビス、お前には大きな借りができたな」

 社長は時間差会議内でそう発言した。

「いえ、義務を果たしただけです」

 アビスは事も無げに返す。

 事後処理をあれこれ通達する社長を眺めつつ、アビスは考えを巡らせる。



「ドローン制御艦、だけじゃないね。

 場合によっては背反行為になるかも」

 空中を一回転して、アビスの愛猫のフェイトはそう言った。

 これからアビスが秘密裏に設計しようという特殊小型艦船の設計プランを見ての感想である。

 アビスの脳を強化するインプラントに住まう電子精霊だが、ノア社本社などに勝手に連絡をするなどはできない仕組みらしい。

 基本的には、アビスのメンタルケアと思考の調整に重点を置いて設計された人工知性であるためだ。

「ノア社、いやアビス・ステーションの力をどれだけ大きく出来るかを試してみようじゃないか」

 鼻歌交じりに、アビスは言った。

 開発している艦は、特殊・最上級司令艦と銘打った個人用戦闘艦だった。

 乗り組むのは、アビスただ1人。

 第二次性徴中の身で改造手術は行えないとされるため、アビスは当面の間は『カプセルド』にはなることができない。

 必要な技術は用意する。

 インプラントのさらなる改良に、単独操縦技術の向上などだ。

 珍しくアビスは肩を揺らして、「くっく」と久しぶりに笑った。

「混沌とした世界で、遊ばせてもらおう。

 舞踏会は、これから始まるの」

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