第三部 カプセルド

新技術

 座標、アゾルテ・T―221。

 アビスに対するノア・テクノロジーズ社の社長からの『お使い』事は、アビス・ステーション及びその周辺の主に民間ステーションをより強固に管理することと、さらに周辺宙域の海賊の一掃が主だった。

 一般的な任務だが、雑用的でもある。

 別段複雑なことではなく、アビスのインプラント脳なら処理は容易い。

 少なくとも、不快なものではなかった。

 また、社長から戦力の増強として新技術が提供された。

 核爆発の直撃にもある程度なら耐えうる特殊なカプセルを、宇宙船の中心部付近に埋め込んで、その宇宙船のカプセル内には操縦者が1名だけ乗るという。

 カプセル内では搭乗者の脊椎せきつい神経と電気的なコードを連結させて、情報を処理。

 個人で自由自在に宇宙船を操る最新技術だそうだ。

 宇宙船の柔軟な運用に加え、人員の削減にも繋がる。

 アビスは新技術のカプセルを使用する戦闘艦約50隻およびその操縦者(改造手術済み)、最新式の攻城戦艦を1隻を特別手当として受け取った。

 カプセル戦闘艦はワープ航行や推進力に優れたものが大半で、神経接続による柔軟な操作・操縦を活かすものになっているようだ。

 攻城戦艦の方はワープ航法の技術を転用した防御型装備Fitの艦船だ。

 攻城戦艦の周囲にワームホールによる薄皮のようなエネルギー・フィールド――バリアを生成し、ありとあらゆる物理攻撃を遮断する。

 これは回避不能な速度のレールガンに荷電粒子砲、電子励起爆弾に核弾頭をも防ぐ。

 まずはこれらと通常艦を使い、周辺の治安を良くしろという話だった。

 かなり折り合いが悪い宇宙警察の庇護ひごが受けられなくなった各民間等のステーションが、いつ海賊に襲われるともわからない。

 ノア社の面子も含め、アビスは動かねばならなかった。

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