パージ作戦4 開戦

 アビスとマルドの艦隊フリートが合流し、戦線が形成される。

 アビスの情報から、巨大な小惑星の片側に艦隊が集中していた。

 ステーションの周囲約二〇〇〇キロメートルではワープ妨害装置が機能しているため(核兵器のワープ転送攻撃を妨害するのが主な役目だ)、その手前で戦争が行われることになる。

 小惑星に埋め込まれた、ここが敵の本拠地ジレッド・ステーションだ。

「2時間待つ」と最後通告を出し、1時間と40分半ばが経過していた。

「やれやれ、ジレットは自分のステーションと心中する気らしいね」

 とは、アビスの脳に滞在する黒猫、フェイトの談。

「手を滑らせてしまい、ステーションをまるごと破壊出来ないかな。

 核兵器とかで」

 アビスの冷徹な声音が、彼女自身の脳内に走る。

「社長にどやされるよー」

「ふむ、やはりそれは最後の手段か」

「やり方の可能性として、排除はしないんだね」

 腰が引けているフェイトだった。

 いずれにせよ、ステーション周辺には何重もの迎撃装置や電磁防壁などが存在し、核兵器といえども有効打には至らない可能性が高い。

 そしてまた、マルドへ連絡を回すように指示するアビス。

「こちら、アビスよりマルドへ。

 敵、ジレット・ステーションの弾薬は既に兵器に装填済みでしょう。

 あまり設計図どおりに弾薬庫を叩いても意味はないかと」

「どのみち無血開城が狙いだけど……。

 もっとも、周辺では雇われた海賊船もどきがうようよ居るし、交戦は不可避かしら」

「ミサイルなどの迎撃が急務になるでしょうね」

「わかっているわ。

 馬鹿高い攻城戦艦まで出っ張ってきたのだから、ミサイルは一発残らず迎撃してみせるわ」


 制限時刻は10分前。

 敵艦隊が前と動き出した。

「こちらアビス・ステーション、最後通告を無視したためこれを破棄し、交戦に移行する」

 正当な裁きだ、とか正当な権利だとか、そうしたまどろっこしい文言は、彼女たちは言わない。

 邪魔者は排除する。

 それだけらしかった。

 アモルドはジレット・ステーション周辺の監視を続け、正確な情報をいつでも送れるようにする算段を整えていた。

「必要とあらば……か」

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