舞台裏

 アビスはあらかじめ、AIに指揮権を委ねていた。

 極めて複雑なプログラムを更にいじり、ある種生々しい動きを可能とするAI。

 それに適宜てきぎ、自艦である攻城戦艦から更新プログラムを送信してドローン戦線を変容させていく。

 アビスの小さな手にフィットする、やはり小型タイプのキーボードは壊れんばかりに叩かれていた。

 全ては勝つために。

 ゲームを楽しむためには勝つ必要がある。

 ドローンは先鋒としての役割を恐ろしいまでに果たしていた。

辣腕らつわんね、アビス殿」

 皮肉でもなんでもなく、素直に幹部マルドはそう連絡を寄越した。

 やや反応は遅れるが、鮮明な映像による通信だった。

「ええ、多少は応じられる余裕はできました。

 そちらの方は?」

 マルドはやや不快そうに眉根を吊り上げ、

「同じく、高速艇に攻撃を受けたわ。

 貴方のよりは上手く立ち回れなかっったから、まあ戦線ごと核で焼いちゃった」

「……では、ドローン部隊の残っている私が最前線の指揮をりましょう。

 よろしくて?」

 マルドは手を叩き、

「わかった。

 でも、手柄を独り占めされるのは困るわ。

 そちらが斥候せっこうの役目を果たしたら、こちらも最前線で戦う」

「それはどうも。

 幸運を」

「ありがとう」

 それで通信は切断された。



「アビス、マルド両陣営艦隊が1万キロ以内にまで接近しています。」

 ステーション内で部下の声を聞いた初老に差し掛かった男、元ノア社の幹部のジレットは、

「戦争開始だ。金で雇った海賊や海賊まがいの傭兵には大いに働いてもらう

 全軍、進撃開始せよ!!」

 そう命じ、宣言した。

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