パージ作戦3――辣腕(らつわん)のアビス艦隊(フリート)

 敵艦隊フリートは待ち伏せを実行していたらしく、遮蔽クローク機能を解除すると高速機動に入った。

 そう、多数の小型・高速艦である。

 単純な火力ではドローンに毛が生えた程度だが、その推進力は極めて高い。

「戦闘および、アビス艦隊の動向を監視する」

 アモルドの戦艦は静観を決め込んだ。

 ドローンの操縦はAIによる自動航行、戦闘ほど複雑になるとリモート操縦である可能性が高い。

 周辺、ゆうに半径500キロメートルは伸びた戦線の先端で、アビス艦隊のドローンが舞う。

 ノア社印のドローンは、勝つために相応しい動きばかりをした。

「この複雑さは、AIには無理でしょうね」

 部下のオペレーターがそう言った。

「ああ。

 まるで簡易糧食のスープと、高級レストランで出される澄み切った清湯チンタンスープぐらいに繊細さが異なる。

 って気取り過ぎかな?」

 アモルドの気軽な声には、「いえ、実際アビスは一流のシェフでしょう」

 アビス艦隊と敵対中の小型艦艇が次々に深宇宙の藻屑もくずとなっていく。

「『敵』の一部が突進しています。

 おそらくは捨て身でドローンの操縦艦を撃沈しようというものでしょう」

「ふむ。

 さて、アビス艦隊はどう動く?」

 敵戦線が伸び切ったあたりで、爆発が起きる。

「ドローンの操縦艦が、自爆しました!!

 この威力は核兵器と思われます!!」

 オペレーターは絶句する。

 爆発は一度で終わらず、各所に襲撃を受けていたドローン操縦艦が爆発する。

「まさか、無人なのか?」

 自爆命令を受け、はいそうですかと引き受ける者はまず居まい。

「ドローンの操縦艦は囮であった可能性が高いですね。

 今もアビス艦隊のドローン部隊はピンピンしています」

「動きの複雑さに変わりは無し、か?」

「はい、全く変わりありません」

「全く、不可解だ」

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