アビス戦争

 アビス・ステーション周辺では、ナノ・パイレーツがステーションに向かって核ミサイルを大量に撃ち込んでいた。

 宇宙警察もそれを追いかける形で無法の徒を取り締まるべく戦地に赴いた。

 ステーションに近づき過ぎるとワープ妨害に遭って座標測定などが困難になるため、遠巻きに海賊船団はひたすら核ミサイルを放つ。

 全てのミサイルは爆発前にアビス・ステーションの迎撃用ミサイル、レーザー、荷電粒子砲、レールガンなどで迎撃にう。

 ナノパイレーツはあまり統率力のある組織ではない。数だけは多い寄せ集めのならず者だな、と幹部アビスは踏んだ。

 海賊の兵装はミサイルだけではないが、あとは義務感の強い警察と戦って消耗してくれるだろう。


 ことの顛末てんまつは全て、アビスの予想通りだった。

 アモルド率いる戦闘艦の艦隊フリートが戦争に突入して、10分が経った。

「味方艦の損耗率2%!! 行けます!!」

 部下のオペレータが緊張しながらも、そう通達した。

「ミサイルと荷電粒子砲は惜しむな!! 全弾放て!! 電力キャパシタの残量を気にするのは後だ!!」

 アモルドの厳命に、はっきりと応じる部下たちに宇宙警察の艦隊だった。

「アビス・ステーションはミサイルの迎撃に注力している模様。

 迎撃艦隊などは出ていません」

「ミサイルの飽和攻撃を防ぎきる、か。事前に対策をしていたように思えるな。

 だが、それについても後回しだ」

「多数の敵艦隊が反転、こちらに向かってきます!!」

 アモルドは声を張り上げる。

「これからが本当の戦争だ!! 諸君、応戦せよ!!」

 アビス・ステーションを取り締まれるほどの戦力が残るかは微妙なところだった。

 既に敵艦隊、ナノ・パイレーツは多数の核弾頭をアビス・ステーションに向けて放っているとはいえ、ワープによる離脱をしないのは迎撃能力が十分にあると見積もっているからだとも思える。

 数時間に及ぶ戦闘後、ナノ・パイレーツが壊滅状態になった頃合いで、アビス・ステーションから入電。

「これより戦闘ドローンを散布する。

 このドローンは当ステーション周辺で戦闘中の艦隊を無差別に攻撃するようにプログラムされている」

 明言は避けているが、宇宙警察へ脅しをかけたのだ。

 アモルドは歯ぎしりをして、

「撤退だ!!

 無差別攻撃を受けるぞ!!」

 ワープ装置を作動して、宇宙警察がその場を離れる。

 ごく僅かに残った海賊船団も即座に離脱していき、戦争は終結した。

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