核輸送

 アビスが次に打った手は、大量の核ミサイルの密輸だった。

 素性を隠し、ナノ・パイレーツに流す。

 旧アビス・ステーション(以前は別の名前だったが)の主であった今は亡き元幹部が隠し持っていた流通経路を使用した。

 他の幹部が調べようとすれば気づかれかねない手法ではあったが、最終的にノア社の利益になるのであれば容認されるだろう。

「15日もかけるつもりはない」

 『疲れない椅子』に座ったアビスが言った。

「ずいぶんな余裕だね」

 冷や汗気味の黒猫、フェイトはそう感想を述べる。

 今回の作戦について、フェイトは推奨はしないがイチ・プログラムとして幹部の行動の阻害そがいはできないと言った。

 事実上の容認であり、ステーション内その全ての権限はアビスにあった。

 ワンマンで行動しているため、ステーション内から誰かが意見することも、情報が外部に漏れることもありえない。

 核ミサイルの弾頭は、アビスは遠隔で自爆させられるようにプログラムがなされていた。

 無人の取引ステーションを指定し、取引が約定。

 数日後、ナノ・パイレーツが大量の核弾頭に釣られて集まってきていた。

 宇宙警察の一部が、さらにその取引現場を抑えようとしたところで、弾頭が炸裂。

 およそ数百キロメートルに渡って吹き飛ぶステーションだった。

 さらに敵対的関係にあるノア社の幹部が、ナノ・パイレーツに情報を流した。

 今回の件は、アビス・ステーションが尾を引いている、と

 全てはアビスの狙い通りだった。

 激昂げきこうした宇宙海賊、ナノ・パイレーツの大艦隊がアビス・ステーションに向かい、それを追いかける形で宇宙警察の大艦隊が戦闘・戦争に入った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る