ジルド・B―299の虐殺

 ワープで逃げようとした下っ端の海賊船団が気づいたのは、強力なワープ妨害がかけられているということだった。

 高級な宇宙ステーションになれば、ワープ妨害装置が常に発動されて核兵器の転送による攻撃を防いだりもするのだが……しかし、それはここではない。

 警察の仕業しわざか? 馬鹿な。

 この遠距離から?

 いずれにせよ、このままではただの射的の的である。

 戦況は極めて不利だったが、血気盛んな海賊たちは応戦していく。

「味方が来たぞ!」

 そう海賊の一人が言った。

 その味方――実際は大規模なワープ妨害ドローンを使用して、B―299の戦線からの離脱を防いでいた幹部海賊船団だったのだが――は、宇宙警察の戦闘船団を壊滅すべく、即座の攻撃に打って出た。

 お互いのミサイルや荷電粒子砲かでんりゅうしほうが発射・狙撃されていく。

 そこで、

 「ファイア」

 冷淡な声で、アビスが指令を出した。

 戦線――B―299ステーションの約二千キロ手前で炸裂する、火花。

 爆炎。

「爆発の原因を探知しました。

 迎撃不可能なほどの速さのレールガンです」

 アモルドの部下の女性オペレーターが伝え、発砲時のデータを送信する。

「最新式の核弾頭・レールガンか。

 マッハ20だと? そんな馬鹿な!」

 音速の約20倍と出ていた。

 宇宙空間なのでおかしな表記だが、下に細かい数字・時速が表示されてもいる。

「原始的な飽和攻撃の核ミサイルとは違う。

 最新式のステルス核砲弾を搭載したクローク・ドローン」

 アビスは自社の製品を喧伝けんでんするように、そう独り言を言った。

 電力消費と機密技術保護の観点から、発射後のドローンは自爆・廃棄される使い捨て仕様だ。

「犬死にするわけにはいかない。

 退避だ!!」

 アモルドと同様に、宇宙海賊の幹部の船団もワープをしていく。

 B―299にはワープ妨害ドローンが機能したままの下っ端海賊船団が取り残された。

「撃て」

 アビスが冷徹な声で無人兵器に命じる。

 幾発の電磁加速・核砲弾が着弾すると同時に、海賊船団と共にステーションは爆炎に飲まれて消失した。

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