囮(おとり)作戦

 ジルド・B―299に入港中の『ナノ・パイレーツ』の一員は一時の安息に酔っていた。

 ナノ・パイレーツの中では下っ端の下っ端ではあったが、それだけに警察には察知されづらく、宇宙で暴虐を働いていた。

 主な悪行は警備の薄い輸送船への襲撃だ。ある程度粉砕し、カーゴの中の高価な代物や艦船そのものを回収するのである。

 そこからやや遠く。

 300キロほど離れた地点では、高度な遮蔽クローク技術を使用した戦艦が多数あった。

 彼らはナノ・パイレーツの幹部が率いる海賊船団で、その存在はB―299に居る下っ端海賊には知らされていない。

 幹部海賊たちは、さる『有益な情報筋』から宇宙警察の存在を知らされていた。

 B―299付近で監視ドローンを幾つも着けており、その結果から遮蔽クロークされていない宇宙警察の戦闘艦が堂々とこちらに向かっている。

 規模はかなり大きいが、B―299の船をおとりにして撃破することは十分可能だった。

 宇宙警察が、精密照準のエネルギー兵器――中性子荷電粒子かでんりゅうしビーム砲でB―299に居た一隻の下っ端の海賊船を破砕すると同時、戦闘が開始される。

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