宇宙警察と宇宙海賊

 アモルドは正義や義務感に燃えていた。

 この手で宇宙海賊共を根絶やしにしてやる、心底そう思っている青年だ。

 人類が母星から外宇宙、深宇宙に進出して何百年も経つ。

 いつしか宇宙は法律が及ぶにはあまりに広大すぎて、管理が及ばない領域となってしまっていた。

 宇宙船である戦闘艦の司令塔は戦艦、これにはアモルドが艦長として乗り組んでいて、さらにそれより小型の駆逐艦が多数、周辺で艦隊フリートを組んでいる。

 宇宙船の電力源は定番の核融合炉で、幾度も改修を繰り返した型だ。通常時の安定性や有事の際、緊急時の運用の安全網セーフティ・ネット幾重いくえにもある。

 この広い宇宙で闇雲に捜査をしても、無駄に艦の電力キャパシタを減らすだけだとはアモルドも理解していた。

 まずは情報収集を最優先で行っている。

 宇宙海賊の組織――宇宙海賊団は幾つか存在するがここ周辺で一番、むしろ唯一可能性があるのは『ナノ・パイレーツ』という海賊団だ。

 極めて小さな数を表すための単位である『ナノ』から取られているのか……。

 その割には規模の大きな組織だ。

 核兵器にまで手を出し、飽和攻撃を行えるのはナノだけだろう。

 宇宙警察に協力的な会社コーポ(国家という概念がいねんがほぼ消滅しているので、事実上の人々の生活基盤的組織の1つである)や各宇宙ステーションからの情報によると、ナノ・パイレーツの小規模フリートがジルド・B―299の軍事ステーションで補給を行っているとのことだった。

 出力の極めて高い、大型の核融合炉を搭載したアモルドのフリートは、ワープ機能をケチらず、最大限まで利用してその周辺で網を張ることにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る