480時間の賭け
「宇宙だか銀河警察だかが喰いついたようね」
アビスは『疲労を許さない椅子』にもたれかかり、言った。
場所は相変わらずアゾルテのステーションだ。出る気はない。
この程度の距離なら多少のズレはあるが、一時間以内にはステーションの電波塔を経由して必要な情報を収集できる。
大規模の
アビスは15歳の少女であるが、アビス・ステーション内ではほぼ全権を委託された大幹部だ。
アビスは、自室であるステーションの管制室内で彼女は情報を眺めていた。
黒猫もどきのフェイト以外は室内に誰も居ない(もっとも、フェイトもアビスのあ脳内に滞在している疑似人工生命なので、結局は彼女だけのようなものだが)。
アビスは独りを好んでいたため、その能力の高さも相まってステーション内の他の構成員である部下は司令室から離れて各々の職務に就いている。
「今回の民間ステーションの襲撃は、こちらへの嫌がらせだろうけど、いつ
フェイトが補足する。分かりきったことではあったが。
アビスも一応、応じる。
「戦力を集めれば察知できる確率は上がるし、それ以下の戦力では返り討ちに遭うだけ。
逃げも隠れもしない警察は当てにできる」
一人で居るにはかなり広い管制室内。
中心部に設置された情報処理CPUが、
フェイトという知性体やAIが司令のサポートを行い、広範な演算処理能力を持つアビスが最終的な意思決定を行う。
有用な情報としては、一般には禁制品とされている核ミサイルの輸送の動きがある。
10AUも離れた別の幹部が運営するステーションと連携を取って手に入れた情報だ。
距離によって時間のズレは生まれるが、必要な情報は連動させて送られてきている。
幹部間での仲間意識はあまりないものの、協調路線でなくては組織が成り立たない。
その幹部によると、核ミサイルの輸送の動きの情報は宇宙警察に流したとのこと。
「勝手だが、都合は悪くない。
問題は、宇宙警察その他をどう動かすか……。
さて、指揮官が正義や義務感に燃えている人だとわかりやすくて助かるんだけど」
そこで、フェイトが事務的な声を出した。
「コンタクト。
20日以内に襲撃犯を見つけられるかで賭けを行うかどうか」
フェイトが金貨を積み上げる画像と共に、10AU先の別の幹部が指揮するステーションからの提案を表示する。
まともな人間なら宇宙の終わりまで遊んで暮らせる、と勘違いくらいはできそうなくらいの金額を、他の幹部は
「対岸の火事だとでも思っているのかしら。気に食わないわね」
しかし、悩まずにアビスはフェイトを手招きさせる。
明滅する『了承』か『拒否』のボタンのうち、『了承』を人指し指でタッチする。
さらに『本当に実行しますか?』も『了承』する。
賭けが成立した。
これはこれで、宇宙に数ある勢力の調整の1つだろう。
「あと480時間、か」
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