第21話

 一方ユーリはダニエルの元へ行き、無事婚約に漕ぎ着けた。


「では宜しくお願いしますね♡」


「は、はい」


 ふん、私の美貌があれば楽勝ね。

 ダニエルは気が弱そうだし、お金は前の婚約者のウィリアムよりあるし、取り敢えず私の人生は安泰ね。


 ユーリは内心ほくそ笑んでいた。

 レイラの奴はムカつくけど、私には些細なアクシデントなのだ。

 気にする事なんてない。


 そうして家に帰ると、父と母が何やら話をしていた。


「お父様、お母様、どうされましたか?」


「ああ、実はウィリアム男爵から連絡があってな、税金を取りすぎているから引き下げようと相談されて……」


「え?」


 まだ姉のレイラが追放された事は世には広めていないが、そういえばウィリアムはこの前のパーティーにも出ているし、レイラがもうこの屋敷からいないことを知っている?


「まあ、レイラの我が儘も聞かなくていいし、昔の様に税金を戻した方がいいと思っててな」


「そ、そうですか……」


 本当は反対したいが、私がここで反対したら父と母に疑われる。


 それにしてもウィリアムの奴、手を打つのが早くないか?

 もう少し後になると思っていたんだけど……


「ユーリ、顔色が良くないけれど、どうしたの?」


 そう母に指摘される。


「あ、いいえ、ちょっと色々な事が起こって疲れてしまった様で……」

「そうね、確かにレイラの一件以来色々あったし、ゆっくり休みなさい」

「ええ、そうします」


 そうユーリは部屋へと戻った。


「レイラの奴、居ても居なくても邪魔なんて、本当嫌な奴ね」


 そうユーリが呟くのを、メイド達は聞き逃さなかった。


「全く、自業自得でしょうに」

「それにしてもレイラお嬢様が心配だわ、だってお嬢様は世間で叩かれている事を知らないはず……」

「そうね……」


 メイド達は顔を見合わせる。


「私達も逃げましょうか?」

「ええ!?でもどうやって?」

「レイラお嬢様が言っていたじゃない。上手く逃げなさいって」


 そうメイドはニコリと笑った。



「何?風邪を引いた?それも集団で?」


 そうブラウン家当主は目を丸くして尋ねる。

 メイド達はマスクをしてゴホゴホと咳き込んでいた。


「え、ええ。ゲホ、実は今朝から身体が重くて。みんなにもうつしてしまった様で、ゴホゴホ」

「それは大変だ。今すぐ医者を」

「あ、いいえ、ただの風邪ですので、ですが何故感染力が強く、このままではお屋敷の方全員にうつしてしまうので、治るまで休暇を頂けませんか?」


「そ、そうなのか?ううむ、まあ幸いレイラの侍女ばかりだし、休んでも大丈夫だろう。安静にする様に」


「あ、ありがとうございます!」


 そう言ってメイド達はこぞって出て行った。


「帰る時の足取りが何だか軽い様な……まあいいか」



「さあ、私達もレイラお嬢様の元へ向かいましょう!」

「でも、一体何処にいるんでしょう?」

「歩いて行ける範囲だと思うし、取り敢えず街の方へ行ってみましょう」


 こうしてメイド達は無事屋敷を逃げる事が出来た。

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