第22話

「ところでアンドリュー、お前が話してるそのお嬢様、レイラ・ブラウンじゃねーの?」


 警察になったごろつきの一人が、どうやら私の事を知っていた様だ。

 すると一斉にみんなの態度が変わる。


「はあ?あの極悪令嬢のレイラだと?」

「何でそいつがここに居るんだよ?」

「そもそもお前のせいで俺達の人生めちゃくちゃなんだよ!」


 これはまずい状況かも?

 というか、私凄い嫌われ様ね、嘘の情報とはいえ少し悲しくなる。


 すると、アンドリューが私の前に出て来た。


「こいつはあんたらが知ってる様な悪人じゃねー。

もし手を出したらぶっ殺すぞ」


「……気に食わねーけど、アンドリューに言われたらなぁ」

「俺もまだ命は惜しいし」


 そう言って、男達はすごすごと離れていった。


「……アンドリューって実はボスみたいな立ち位置なの?」

「は?

いや、ただ一番喧嘩が強いだけだ」

「へえ、成る程」


 アンドリューが味方になってくれて良かったと心から思った。


「助かったわ、ありがとう」

「お、おう」


「レイラお嬢様ー!」

「ん?あ、みんな!?」


 すると、レイラの元にはかつて自分が助けていたメイド達がやって来た。


「人探しするならまず警察と思って来たんですけど、ちょうど居てくれて良かったです!」

「大丈夫でしたか?お怪我は?」

「あら、腕に切り傷が!大変ですわ!」


「みんな落ち着いて?

私は大丈夫だから。ところで何故ここへ?屋敷は?」


 レイラはみんなを落ち着けて話を聞く。


「はい、旦那様に風邪だと言って休暇を貰いました!」

「でも私達はレイラお嬢様について行きますので、なんなりとお申し付け下さい!」


「そうだったの、ありがとう。

それでユーリの方はどうなのかしら?」


 私は早速気になっていたユーリの事を尋ねる。


「はい、あの後荒れていましたが、ウィリアム男爵の婚約を破棄してダニエル伯爵と婚約したそうです」

「悪びれもせず良くもまあ男を乗り換えますよね」

「本当本当!信じられませんわ!」


 どうやら私の読み通りの様だ。


「それに、ウィリアム男爵がもう減税の話を出して更に怒ってましたね」

「あら、もう連絡が行ったのね」


 流石ウィリアムは行動が早いな。

 ありがたい話である。


「え?お嬢様、ウィリアム男爵とお話されたのですか?」

「ええ、まあ、その減税を頼みにちょっとね」


「お嬢様、私達が何か手伝える事はありますか?」


 メイドの一人に聞かれて私はそうだなと考える。


「実はこの街を復興しようと思ってるんだけど、みんなにもお願いしていいかしら?」

「復興!?」


 流石に私が下町に来てそんなことしているとは考えてもいなかった様だ。

 まあ、それもそうだろう。

 

「凄いですわ!是非私達もお手伝いします」

「私、役場に知り合いがいますので、その辺はお任せ下さい!」

「私の兄が法律関係に強いですよ。声かけてみますね」


「みんな、二つ返事だけど本当にいいの?」


 何ともあっさり承諾されて、レイラは逆に困惑する。


「はい!だって私達の主人はお嬢様ですから!」


 何だか泣けそうだ。


「こうして見ると、本当にお嬢様なんだな」


 メイド達とのやり取りを横目で見てたアンドリューが言う。


「まあ、一応この間まではちゃんとお嬢様だったわよ?」


 私はそう茶化す様に言った。

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