第14話

 レイラはユーリがこれからどう動くつもりかを考えた。


 きっとあの我が儘なユーリは今より少しでも贅沢出来なくなるのは耐えられないだろう。


 かと言って自分が悪役にはなりたく無い。


 そしてユーリは自分の美貌に絶対的な自信がある。


 となると、男に貢いで貰おうとか考えていそうだ。


 もしくは最初からそのつもりで私の婚約者であるダニエルを奪うのも視野に入れていたのかもしれない。


「でもあの子案外馬鹿だから、そこまでは考えてなかったかもだけれど」


 もしそうなら私の事を追放したと世間に伝えて、不当な税金の値上げや今まで献上させた宝石類なんかを返すだろうか?


 いや、ユーリは一度手に入れたものは手放さない。


 きっとギリギリまで私が追放された事は 言わないつもりだろう。


 もしくは


 ……いや、多分そこまでは考えないだろう。


 ユーリは私の事を下に見ているし、私がどう動くかなんて考えもしない筈だ。


 自分の事しか考えてないだろう。


 それに私なんてすぐに何処かでのたれ死んでるとすら思っていそうだ。


「そうなると、ユーリはすぐにでもダニエルの方へ擦り寄りそうね」


 ダニエルは結構気が弱い男だし、顔だけはいいユーリに言い寄られれば恐らくイチコロだろう。


 それに、父も母も長女である私がいない今、位の高いダニエルとユーリをくっつけたいと思う筈。


 そうなるとユーリの婚約者のウィリアムはどうするのか?


 きっと、すぐ様ユーリは婚約破棄を願うだろう。


 ウィリアムはそれを簡単に受け入れるだろうか?


 私はウィリアムとはあまり話したこともないが、どう思うだろうか?


 ん?待てよ?

 そもそもウィリアムの家は税務署のトップでは?


「わざわざブラウン家を通さなくても、税金をどうにか出来そうね」


 アンドリューが戻ってきたら、ウィリアムの所へ交渉に行くとしよう。


 しかし、今の私が行っても立ち会って貰えるだろうか?


 あれだけパーティーで大声で喚いてしまったし。


「はあ、あれは言い過ぎたかしら……」


 私は今更あの言動を後悔する。


 街に出れば普通に暮らせると思っていたのに、まさかこんな事になるなんて思ってもいなかったし。


「いや、でも背に腹は変えられない。

それにブラウン家に交渉するよりウィリアム男爵の方が断然勝ち目があるし」


 そう考えていると、扉が開く音がした。


 どうやらアンドリューが帰ってきたらしい。


「あら、おかえり」


 するとアンドリューは目を丸くしてこちらを見てきた。


「お、お前何でロープが外れてんだよ!!」


 そうアンドリューは怒鳴ってきた。

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