第15話

「ああ、ごめんなさい。

ロープなら劣化していたから噛みちぎっちゃいました」


 レイラはそう悪気なく話す。


「はあ!?

噛みちぎった!?」


 アンドリューはそれを聞いて驚く。


「つーか、普通ロープ千切れたんなら、逃げ出すんじゃねーの?

この扉だって、ぶちあたれば簡単に壊せるのに」


 そうアンドリューは扉を指差して言う。


「あ、その発想は無かったわ。

でも、ずっと言っている様に、私は逃げる気なんてない」


 私はそうアンドリューに言いきる。


 アンドリューはまるで訳が分からないと言った顔をしていた。


「意味が分かんねー、逃げれば殺されずに済むのに?

あんたそんなに殺されたいのかよ?」


 そう聞かれ、レイラは首を横に振る。


「殺されたくなんて無いわよ。

でも私の我が儘を聞いてくれるアンドリューを裏切る気もない」


 アンドリューはドンッと小屋の壁を殴った。

 その顔は不機嫌そうな、しかし何処か葛藤している様にも見えた。


「何でだよ!?

あんたあのレイラ・ブラウンなんだろ!?

もっと最低な奴でいてくれよ、じゃないと」


「復讐しても、気持ち良くなれないだろ……」


 そうアンドリューは顔を俯かせた。


「あの、アンドリュー。


復讐しても、気持ち良くないのは当たり前よ?」


 レイラはそうアンドリューに冷静に伝える。


「はあ!?あんたに何が分かるんだよ!」


 そうアンドリューは今にも殴りかかりそうに睨みながら怒鳴る。


「だって、アンドリューは人を殺したくないでしょ?」


「……は?」


 アンドリューは目を丸くした。


「人を殺す事が気持ち良いと思えるのは、一部の狂った人達だけよ。

アンドリューはそうじゃないでしょ?」


「だから、お前は俺の何を知っているんだよ!?」


「それならアンドリューは私の何を知っているの?

あんなニュース通りの人物だと思った?」


「それは、その」


 そこでアンドリューは口をつぐんだ。


「確かに私はみんなが知っているレイラ・ブラウンとは違うでしょうね。

あんなの全部嘘ばっかりだし」


「はぁ!?」


 本当はもっと信頼を得てからネタバラシしようかと思っていたが、まあこの際先に誤解を解いてしまおう。


 そう思い、レイラは口を開く。


「増税だの宝石類献上だの、やったのは全部私の妹のユーリ・ブラウンよ。

私はあの子に良い様に使われていた。

まあこの話を信じるも信じないもあなた次第だけれど」


 突然のことに、アンドリューは一瞬思考が停止する。


「は?つまりこの街をめちゃくちゃにしたのはお前じゃない……?」


「ええ、そうよ?」


 私は堂々とそう宣言する。


「なら、何でもっと早く弁明しなかったんだよ!?」


 そうアンドリューは怒り気味に尋ねる。


「じゃあ最初の出会った状況で私がそう言っても信じたかしら?

苦しい言い逃れにしか聞こえないと思うけど?」


 それを聞いて確かにとアンドリューは納得する。

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