第12話

「それじゃあアンドリューの知り合いに頼みに行きましょうか」


 私がそう言うと、アンドリューは少し考え始めた。


「あー、あんたは会わない方がいいかも」


 レイラは何のことだと一瞬考えるも、すぐに答えが出てきた。


「つまり、私を大嫌いな人が沢山いるという訳ね?」


 私がそう尋ねると、アンドリューは答える。


「まあな。言ったろ?あんたを殺したがってる人は五万といると。

しかしあんたを会わせると他の奴らに殺されかねない」


 それを聞いてレイラはふふっと笑った。


「私の心配をしてくれるのね?」


「俺があんたを殺すって決めてるのに、横取りされる訳にはいかないからだ!」


 アンドリューは睨みながら答える。


「はいはい、分かってるわよ。

それでどうするの?」


 私が尋ねると、アンドリューは仕方なく私の腕を掴んでまた路地の方へと引き返した。


 そしてまたロープで私の手足を縛り、小屋の中に入れられる。


「ドアは閉めておくから、逃げんじゃねーぞ」


 そう言ってアンドリューは去っていった。


「さて、この間私は暇だし、この後の事を考えようかしら?」


 ふと足に縛られたロープを見ると、一箇所劣化のせいか切れかかっていた。


「……

まあロープ外しても逃げなきゃ問題ないか」


 私は足の所に顔を近づけてロープを思いっきり噛む。


 そして切れかかっていた所の横から思いっきりロープを引っ張った。


 するとブチブチッとロープが切れる音がした。


 それから足を動かして少しずつロープを解いていく。


「ふー、足が自由になったわ」


 それから私は棚を物色する。


(お、これは……)


 私は棚からナイフを頑張って取り出す。

 後ろで腕が結ばれてるせいでナイフが取りづらい。


「痛っ!」


 取るとき少し指を切ってしまったが、まあ仕方ない。


 私は小屋の床の溝に何とかナイフを固定して、腕のロープを少しずつ切っていく。


 といっても後ろが見えないせいで、凄く難しい。


 結局、ロープが切れた頃には腕にあちこち切り傷が出来ていた。


 放っておいて雑菌が入るのもいやなので、小屋の蛇口を捻る。


 幸いちゃんと水が出てきてくれた。


 私は傷を水で洗い、ついでに喉が乾いていたのでその水を飲む。


 コップなどないので、自身の手で汲んで少しずつしか飲めないのが難点だ。


 手足の自由を取り戻し、私は小屋の中を見回す。


 一応トイレはあるし申し訳程度のキッチンもある。使われてはいなさそうだが。


 流石にお風呂は残念ながらない。


 それから棚があるくらいで、後は特に何もない。


 アンドリュー1人でここに住んでたのだろう。


「アンドリューのご両親はどうなったのかしら……」


 私に両親の仇と言っていたことから、恐らくもう他界しているのだろう。


 聞いてみたいが、それで思い出して逆上されて刺されたりしたら大変だ。


「はあ、誤解はいつか解けるかしら」


 誤解と言えば、とふと思い出す。


 私を悪女に仕立て上げたブラウン家は、どうする気でいるのだろう?


 もし私の追放を隠蔽して、私の悪事をまた捏造するつもりなら、私も証拠を揃えて訴えるのも手だ。


 それに税金の問題も、結局はこの街を管轄しているブラウン家には接触しなくてはならない。


 しかし私が居ない手前また簡単に捏造も出来ないだろうけれど。


 ユーリにとってそこは頭が痛い所だろう。


「今頃ユーリはどうしてるのかしらね?」

 

 私はふふっと笑った。

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