第237話 鈴音さんと共に暮らす生活 その4

 俺は慎重に運転をしながら、山道を下っていく。

 稀子の地区を繋ぐ道路は、俗に言う分断道路で有る。

 稀子の家が有る地区が最後の集落に成って、数キロ先に有るキャンプ場で道が途切れる……


 稀子の話によると、その先を繋げる話も全く聞かないので、大型トラック等は滅多に通る事無く、また、観光道路とも言いがたいため、地元専用道路に近い状態で有った。


 稀子が付いて来ているから、道案内などは稀子が勝手にしてくれる。稀子ナビ付きだ!

 市街地までは、ほぼ一本道だが迷わない保証は無い。鈴音さんと2人だったら、恐らく地図アプリを使っているだろう。


 やはり……過去の経験と言うか、走り始めはだったが、普段から軽トラでも運転していた事から、直ぐに勘とコツを覚え始める。

 2トントラックでもほろも無く、荷台もロングタイプでは無いので、ハ○エース等のワゴン車と比較すれば、2トントラックの方が運転しやすいかも知れない。

 順調良く市街地に向けて、山道を下って行くが……


「比叡君!」

「このトンネルを抜けると、勾配がきつい下り坂に成るから、エンジンブレーキを強めに掛けないと危ないからね!!」

「雪の日何か特に、事故を起こす危険場所だからね!」


 稀子は免許も持って居るし、地元の道路だから、この辺りの道路状況は熟知している。

 稀子は親切心で言って居るのだが、はカーブの度々に音声を出すから、落ち着いて運転はしにくい……

 稀子が常に近い状態で俺に話し掛けているので、鈴音さんも話し掛けようが無かった。


「ここは下り坂の割に集落が有るし、彼処の工場から車が出る時が有るから気を付けてね。比叡君!!」


 稀子ナビは有り難い機能だが……これでは、自動車学校の生徒気分で有る。

 だが、稀子ナビをOFFにする訳には行かないので、俺は稀子の言葉を半分聞き流しつつ運転する。


 ……


 行きは、下り坂の影響でスピードが乗ってしまうので、予想時間より早くスーパーに到着する。

 稀子曰く『このスーパーで大体の物は揃うけど、衣類とか日用品とかはやっぱり、波津音市はずねしに出た方が良いかもね』と言う。


 この市は波津音市と比べれば規模は小さく、ショッピングモールも市内には無くて、ひなびた町(市)と言えば良いのだろうか? 市街地も大きいとは言いにくい。


 ちなみに、鈴音さんの元実家が有った家は、ここから徒歩で十数分らしいが、鈴音さんが行くのを嫌がった。

 鈴音さんの元実家は、鈴音さんの両親が離婚する時、財産分与の関係で売却されてしまって、今は誰の手に渡ったのかは不明で有る。


 凉子さんは波津音市に住処すみかを移したし、鈴音さんの父親とその息子は、本家の力を借りられ無く成ったため、この町を捨て他所の地域で、細々と事業を続けているらしい。

 この町で、鈴音さんの父親や息子に会う事は無いだろう。


 3人で、食料品や調味料、お酒、洗濯洗剤等の日用品を買い込む。

 鈴音さんが持って来たノートには、分類ごとに細かく書かれていて、お母さん顔負けで有る!

 鈴音さんはノートを見ながら俺と稀子に指示を出して、それを買物カゴやカートに乗せて行く。


 今まで、ビールと言えば瓶ビールが長く続いていたが、今日からは缶ビールに成る。

 真理江さんや稀子の家は酒屋で買っているが、酒屋で酒類を買うより、スーパーや酒専門店の方が安いし、空き瓶の処理にも困らなくても良い。酒屋で買うメリットは、自分で運ばなくても良い事だ。


 稀子が居た御陰で、カート2台分の量に成っても、無事に買物を済ます。

 後はこれを荷台に積み込んで、帰るだけだが……ここからが問題だ!

 俺が荷台の場所から動かないので、鈴音さんや稀子は、不思議な表情をして俺を見ている。


 運転席内に荷物を積み込むスパースは無いので、荷台に荷物を積むが、荷台はが有っても開放状態のため、普通に置いただけでは山道を登って行く時に、荷物が転げ落ちたり、カーブの遠心力で何処かに飛んでいく恐れも有る!?


「前の方に置いてみたが、これだけでは駄目だよな」

「どうやって……無傷で持ち帰るべきか」


 俺は荷台に置いた荷物を見て悩んでいる。

 けど、このトラックには荒縄が積み込まれている。

 荒縄で買い物袋を固定すれば良いのだが、買い物袋を纏めて縛り上げただけでは、上り坂を走っている時に後ろに転がっていく。


から荷物が出っ張っていれば、縄で固定も出来るが、買い物袋は内に収まっている。

 軽トラの様に、荷台を全面シートで覆えば良いのだが、今回は2トントラックだから、シートを被しただけでは、の高さの関係で、荷物が飛んでいくのは防げるが、荷物がに成るのは避けられない……


 俺は何か、良いアイディアが無いかと考えた……

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