第236話 鈴音さんと共に暮らす生活 その3

「稀子…」

「今後のためにも、トラックで良いから貸して貰えないか?」


「うん…。分かった」

「お父さんに聞いて見る」


 稀子はスマートフォンを取り出して、稀子の父親、幸村さんに電話を掛ける。

 しばらくすると、幸村さんが電話に出たようだ。


「あっ、お父さん! 私、稀子!!」


「―――」


「えっ、あっ、うん…」

「あのね……比叡君達が、町に買物に行きたいから、トラックを貸して欲しいそうなの」


「―――」


「あっ、うっ、うん…。比叡君には確認取ったよ!」


「―――」


「あっ、うん…。分かった」

「比叡君に代わるね!」


 稀子は、そう電話向こうで言ってから、俺にスマートフォンを渡してくる。


「比叡君。お父さんが確認したいから、代わってだって!」


(やっぱり、素直には貸さないよな…)


「分かった…」


 俺は稀子からスマートフォンを受け取り、幸村さんの電話に出る。


「もしもし。」

「代わりました。青柳比叡です!」


「おぉ、比叡君か!」

「稀子から話は聞いたが…、町に買物に行くためにトラックを借りたいそうだな…」


「はい。そうです…。車の方が荷物を沢山積めるので」


「まぁ、それはそうだが……比叡君!」

「この辺りは町中の平坦みちでは無く、山道ばかりだが、運転は大丈夫かね?」

「今まで、トラックに乗った事が有るそうだから、運転出来るなら貸しても良いが……」


(幸村さんも、稀子と同じ考えだな…)

(事故時のリスクを考えている)


 けど、ここで弱音を言ったら、絶対に貸してはくれない!

 自信が無くても、自信が有るように言う!!


「はい。大丈夫です!」

「トラクターと比べれば、トラックの方が安定感有りますし、軽トラですが、法人時代では毎日運転していました!」


「……分かった」

「比叡君に其処までの自信が有るなら、君にトラックを貸し出そう!」


(よし!)


「……けど、擦る程度なら良いが、事故だけは絶対に起こさないでくれよ」

「まだ、不慣れな君に、本当は俺が同乗したいが俺も別の用事が有る」


「もし、事故を起こして、比叡君や鈴音さんの将来を台無しにしてしまったら、悔やんでも悔やみきれないからな……」


「大丈夫です! 幸村さん!!」

「安全運転で行きますので!!」


「そこまで言うなら、比叡君を信用しよう!」

「なら、好きに使ってくれ!!」

「鍵の場所とかは稀子が知っているから、後は稀子に聞いてくれ!」


「はい。有り難う御座います!」


「じゃあ、気を付けてな!」


「はい!」


『ピッ♪』


 幸村さんとの通話が終わる。

 無事にトラックを借りる事が出来た。


「鈴音さん。トラックですが借りる事が出来ました」


「はい♪」

「トラックでも嬉しいです。比叡さん!」

「お買い物が楽になります♪」


 車を借りる事が出来て、喜んでいる鈴音さん!

 鈴音さんの喜び方を見ると、農業の関係で軽トラに成るが、早期に車の購入を考えなくては成らないと俺は感じた。


「それで、何時出掛けるの。比叡君!」


 何故か、嬉しそうに聞いてくる稀子?


「そうだな…。稀子」

「15時までにはキリが付くと思うから、そこからかな?」


「15時ね!」

「なら、その時間に成ったら家に来て!」

「鍵と場所の案内をするから!!」


「わかった! 稀子!!」


 ……


 稀子とのお茶会の後、稀子も私物の荷ほどきのために家に戻り、俺と鈴音さんも荷ほどきをする。

 バスによる買物では無く成ったため、バスの時刻に追われる事無く作業が出来る。


 15時前に引っ越しのキリも付いたため、今からは町への買い出しで有る。

 鈴音さんは買い出しリストが書かれている、ノートをバッグに入れていた。

 車で行く事に成ったから、かなりの物を買い込むのだろう……


 2人で稀子の家に行き、稀子からトラックの鍵と場所の案内をして貰ってから、いざ買物に出掛けるのだが……


「さぁ、出発だ~~♪」

「比叡君。安全運転でね!!」


 俺と鈴音さん…。稀子も真ん中の席に座って居る。

 俺達が町に出るなら、稀子も付いて行くの流れになった。

 いや、最初から稀子は付いて来る気満々だっただろう。


 山間の町だからコンビニも当然無いし、稀子が付いて来たがる気持ちも理解は出来るが……

 密かに楽しみにしていた、鈴音さんとの初めてのドライブデート(?)は稀子の乱入よってお流れに成った……

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