第233話 稀子の家で過ごす夜

 稀子が部屋に戻った後は、鈴音さんと2人の時間に成るが……


「比叡さん!」

「もう、私達は後戻り出来ないのです。大変で辛いでしょうが頑張りましょう!!」


 不安に成った俺を、鈴音さんが励ましてくれる。

 稀子の家でなければ、鈴音さんを抱きしめて、そのまま布団に押し倒しているだろう。


「ありがとう。鈴音さん」

「大変だけど、2人で頑張っていこう」


「はい…」


 鈴音さんは静かに頷く。

 俺は此処で、鈴音さんに相談するべき事を言う。


「鈴音さん。話が変わるけど良いかな」


「どうしましたか?」


「実は、今日の昼間…」

「真理江さん妹夫婦の男性に言われたのだけど、夫婦で助成金を貰いたいのなら、早急に籍に入るべきだと指摘されてね」

「俺としては、鈴音さんとの生活に慣れてからで良いと感じていたけど、確実に助成金が貰いたければ早急の方が良いと感じて…」


「それで……鈴音さん」

「何時、夫婦めおとに成りましょうか///」


 俺は恥ずかしそうに鈴音さんに言うけど、鈴音さんはとした表情をしていた!?


「夫婦ですか…?」

「お母さんが明後日こっちに来ますし、明後日にしますか」


 鈴音さんは、友達と遊ぶ約束をする感覚で言う。

 この人は、結婚する意味を理解した上で言っているのか!?


「そんな簡単に決めて良いのですか!?」

「俺達、正式な関係成るのですよ。鈴音さん!!」


 俺は焦りながら言う。

 俺のとっては嬉しいが、もっと慎重に成るべきでは無いか?


「?」

「比叡さんは、私と正式な関係を結ぶのは嫌ですか?」


 鈴音さんは『何、言っているの?』の表情をしてる。


「いっ、いえ。俺は凄く嬉しいのですけど……」


「比叡さん。農業の大変さは、私もこの間にたくさん勉強しました」

「稀子さんの地域は冬季の間、露地栽培が不向きなの事とか、この国の農業現状等の勉強もしてきました」


「夫婦で新規就農をすればその分、余分な助成金が貰えるなら、私は貰うべきだと感じました」

「特に今年、来年に関しては、農業による収入は全く当てには出来ません」

「比叡さんが今まで蓄えてくれた貯金と助成金と、私の貯蓄が私達の生活費です」


「夫婦で農業をする事に依って、助成金が余分に貰えるなら、私は比叡さんの籍に入る事は躊躇いません!!」


 目を真っ直ぐ向けて、力強く言う鈴音さん。

 鈴音さんは、俺より遙かに覚悟を決めている様で有った。


「そう言ってくれると嬉しいです。鈴音さん」

「では、明後日にでも、届けを出しに行きましょう!」


「はい…。私はそれで良いのですが、問題が有りますよね」


「比叡さんご両親の報告は、どうしますか?」

「まだ、何も言っていないのですよね…」


「その事は事後報告に成るが、落ち着いたタイミングで言うよ」

「俺はほぼ勘当状態だから、何も言われる事も無いだろうし、言われても逆ギレするだけだよ」


「……実の両親に、逆ギレはしない方が宜しいですよ。比叡さん…」


 鈴音さんは俺をたしなめる。


「大丈夫ですよ。鈴音さん」

「お互いが無関心だから、無関心で終わりますよ!」


「それで、終われば良いですけどね」


「……鈴音さん。そろそろ、休みましょうか」

「明日は、新しい住処の生活準備等、今日よりも忙しい1日に成るでしょうし」


「そうですね。比叡さん」

「明日からが、本当の生活が始まりですからね」


「鈴音さん。布団に入る前に軽くしましょう///」


「軽くですか…?」

「けど、稀子さんの家では不味いですよ///」


「鈴音さん。軽くの意味はキスですよ」

「俺だって、バカでは有りませんから!!」


「そう言う事なら。はい///」

「ここは稀子さんの家ですから、お布団を汚す訳には行けません!」


「んっ…」


 軽いキスをした後、俺と鈴音さんは布団に入る。

 本当はキス以上の行為を望むが、ごみの痕跡からが、稀子の両親にバレてしまう。


 今晩は痕跡が残らない。キスだけで留める。

 明日から、嫌と言う程出来るように成るのだから。鈴音さんが望めばの話だが……

 俺は今後の生活や、新しい家族の事も考えながら眠りに就いた。

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