第225話 夢が実現する時…… その2
定時報告を見た当時……
「孤島でも作る気に成れば、彼女は出来るんですね。鈴音さん……」
俺の中ではてっきり、男性ばかりの場所だと思っていたからだ。
「比叡さん…。あの時は説明不足でしたので、此処で補足します」
「孤島でも…、滞在施設は男女のスタッフで常駐していますし、その構成も若い人が中心です」
「えっ!?」
「孤島なのに、若い人が中心ですか。それも男女で!?」
「男女だと山本さんの様に、カップルが誕生してしまいませんか!!」
「その辺は詳しく聞いていませんが、そう成りますよね…」
「けど……何処かの地下施設では無いので、それが普通では無いですか?」
鈴音さんは真面目な表情で言う。
(何処かの地下施設…?)
(本家は、怪しい事業も展開しているのか??)
(聞いて見たい気もするが、これ以上本家の闇を知っても後が怖いな…)
今の時代……男性・女性のみの職場は少なく成ったが、滞在施設は社内恋愛(?)を容認していると理解すれば良いのか?
「でも、鈴音さん!!」
「人生を一番謳歌する時期に、海しか無い場所で暮らすのも酷では無いですか!!」
「どうせなら、人生に先が無い人で構成すれば良いのに!」
「比叡さん。それはそれなりの理由が有るのです」
「理由ですか…?」
「地理的に辺鄙な場所ですから、体力や大きな病気に掛りにくい世代が中心で無いと、不都合が多すぎます」
「トラブルの対処や発想の豊かさなど……」
「成る程…。若い世代が中心だから、山本さんが恋愛をする事が出来たと……」
「でも、これで、孝明さんは私の事を忘れるでしょうね……」
嬉しそうには言わずに、何故か寂しそうに言う鈴音さん!?
やはり……鈴音さんの中では、まだ未練が有った!!
「あっ……!? ひっ、比叡さん//////」
「勘違い、しないでくださいね!//////」
鈴音さんも、自分の言った言葉で気付いたのだろう。
「……」
だけど、男としてその言葉を聞くと、何故か『ムッ!』としてしまう。
「別に孝明さんを想って、発言したのでは有りません!」
「山本鞄店時代の事を、忘れてしまうでしょうねの意味です!!」
「私や稀子さんと、山本鞄店を盛り上げていた時代を!///」
鈴音さんは焦りながら言う。
咄嗟に付けた感じだが、そう来たか…。更に稀子も付け加えて、誤魔化しをパワーアップさせた。
「山本さんは、元ランドセル職人だからな……」
「本当は、山本さんと鈴音さんは店を引き継いで、鈴音さんも職人に成りつつ、店の経営も考えて居た」
「その思い出と言うか、その部分が寂しいの意味も含ませて、鈴音さんは言ったと……」
「はっぃ、はい!」
「比叡さん。その通りです!!」
(まぁ……そう言う事にしておこう)
(未練は簡単に断ち切る事は出来ない)
(俺も学園時代に失恋した時は、未練たらたらだった…)
実際、鈴音さんは、山本さんより山本鞄店の方が大事だった。
だからこそ、真理江さんをお母様と呼んでいる。
鈴音さんが職人には為れず、店の経営にも関与させない発言をしたから、鈴音さんは俺の方に近付いてきた。
「まぁ……山本さんに彼女が出来たら、これで一安心だね。鈴音さん!」
「彼女が居るのに、それでも俺達に復讐に来たら、ドラマでも有り得ない展開に成るよ」
「定時報告を読む限りでは、以前よりも元気を取り戻して、活気も出て来たそうです」
「彼女さんが居る間の孝明さんは、比叡さんを復讐する気持ちは、きっと薄れるでしょう……」
「俺もそれを願うよ…」
「相手の人が、どんな人かは判らないが、きっと鈴音さんに似ている人なんでしょうね!」
「ひっ、比叡さん!///」
鈴音さんは驚きながら言う。
でも言うまでも無く、鈴音さんに似ている人だろう。
山本さんは、鈴音さんが本当に好きだったからこそ、それを泥棒猫の様に奪った俺を許さなかった……
南取島滞在施設の詳しい話を更に聞いてみると、施設で働いているスタッフは全員、身寄りが無い人らしい!?
両親を事故で亡くしたとか、虐待や育児放棄等で、養護施設に預けられていた人達ばかりで有ると……
ある年齢に達すると、養護施設から出なければ成らないが、虐待や育児放棄や等で、心に大きな傷を背負っている人は中々、一般的な社会生活には馴染めない。
まだ、年代が若いから、生活保護等の社会保障も受けにくい。
『その様な人達に就労の機会を提供する』内容で活動している、本家が絡んでいるNPO法人が有り、滞在施設の維持・管理は、本家からそのNPO法人に委託運営されている。
そのNPO法人は主に、本家の関連する企業を中心に活動している。
その様な人達に滞在施設の運営が出来るのかと考えるが…、スタッフの仕事は主に、清掃や自分達が食べるための作物の栽培や料理が中心だそうだ。
要所要所はNPOの正規職員がやる。
仕事に対する制約はかなり緩い上に休暇も有るし、医師も滞在しているそうだ。
だからこそ、その様な人達がでも働けるのかも知れない……
……
俺は特にやる事が無いので、今までの出来事を振り返っていた。
その間に大分の時間が経っていた。
稀子も鈴音さんが居る手前、俺に積極的には話し掛けず、スマートフォンを触っている、
(でも、時間的にそろそろ移動するべきだな…)
俺がそう思った時に、俺達の前に1台の車が止まる。
出発間際に誰が来たのだろうか…?
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