第211話 今後の対策!? その6
「匂いで大体分かっていましたが、今晩はやはりカレーですか…」
台所に入った途端、鈴音さんはそう言う。
態々そんな事を言うなんて、嫉妬心でも有る!?
「稀子さんがカレーを作るなんて珍しいですね…?」
鈴音さんの口調からして、稀子は鈴音さんに遠慮して、煮込み料理系統は作らないのだろうか?
「
稀子は鈴音さんに笑顔で言う。
稀子の作るカレーを食べるのは、初めてかも知れない。
「今から盛り付けるから、おばさんと鈴ちゃんは座って居て!」
稀子はカレーライスにするための盛り付けを始める。
今晩は俺も手伝っているので、自動的に手伝いを行う。
しばらくすると……みんなの所にカレーライスが行き渡る。
カツカレーと言ったのにカレー上にはカツを乗せずに、テーブルの真ん中に大皿に乗せられた豚カツが置かれている。豚カツは食べやすい様にカットされている。
「カツカレーだけど、豚カツで食べたい人も居るだろうから、カツは銘々でね♪」
鈴音さんがカツカレーを作る時は、定石通りで提供する。
稀子は気が利いていると言うべきか?
「私は……今日は豚カツの気分だわ」
真理江さんはそう言いながら、豚カツをカレーには乗せずに別皿に乗せる。
稀子の気配りは功を制した様だ。
俺も折角だし、途中までは豚カツで食べて、最後はカツカレーにする事に決め、豚カツを別皿に乗せる。
みんなで『いただきます』をすると、直ぐに真理江さんは無言で立ち上がり、冷蔵庫から瓶ビールを取り出す!?
「……青柳さんも飲みますか?」
「はっ、はい。折角ですし…」
真理江さんは今晩、飲みたい気分で有るのだろう。
鈴音さんはそれを無言で見つめているが、言葉を発しようとはしなかった。
真理江さんは自分と俺の所に瓶ビールを置いて、無言で栓を抜いて、手酌をして、並々の注がれたビールを一気に飲み干す!?
真理江さんらしくない飲み方だった……
「ふぅ~~」
軽いため息の後、稀子が揚げた豚カツにソースをたっぷり掛けて、更に辛子を少量乗せて、それにかぶり付いている!?
女性の食べ方では無く、中年男性が食事する様な感じで、真理江さんは食べている!!
真理江さんの豹変した食べ方に、俺達は唖然と見るしか無かった。
「みなさん…」
「温かい料理なのですから、早く食べないと冷めますよ!」
「はっ、はい…。ですね、お母様…」
「おばさん。何時もと違う様な…?」
「俺も豚カツを食べようかな~~」
俺達はそれぞれ言葉を言うが、真理江さんは返事をせずに、食べる事を再開させる。
真理江さんの口調は何時も通りでは有るが、食べ方は本当にやけ食いをしている食べ方で有った。
ビールを飲んで豚カツを
普段温厚な真理江さんの食べ方では無かった…。そうでもしないと、気分が落ち着かないのだろうか?
今晩のメニューは酒が進むメニューでは有るが、俺は何時も通りの飲み方・食べ方が出来なかった。
真理江さんの豹変した食べ方に、俺が驚いてしまったからだ。
先ほどの事を、食事をしながら話すと言った真理江さんだが、微塵も感じられない。
それに会話を楽しむ食事の雰囲気では無い…。真理江さんに圧倒されながらの晩ご飯に成りそうだ……
……
稀子が作ったカレーは、鈴音さんの作るカレーより美味しい気がした。
稀子が作った方が、スパイシーと言えば良いのだろうか?
使うカレールーが違ってくれば当たり前の話だが、改めてカレーは奥深い物だと感じた。
俺も鈴音さんに遠慮してカレーは作っては無いが、俺のカレーも食べて欲しい思った。
満腹に成って真理江さんは満足したのか、最後はゆっくりとスプーンを置く。
普段、カレーはお代わりをしない真理江さんだが、今晩はお代わりをした。
冷たい水を一気に飲み干すと、また、そこで息をつく。
「ふぅ~~~」
「……お見苦し所を見せて、申し訳有りませんでした」
理性も戻って来たのか、俺達に向けて謝る真理江さん。
「状況が状況ですから、仕方有りません…」
「鈴音さん、稀子。そうだよね!」
「はっ、はい……」
「そんな日も有るよ。おばさん…」
俺の問いに返答をする鈴音さん、稀子。
「食事時に話すと言いましたが……食後に成ってしまいました///」
「先ほど…、私と鈴音さんで生まれた妙案を、青柳さんや稀子さんにも聞いて貰いたいと存じます」
「仮の状態ですが、本家にも確認を取った所『前向きに検討する』とおっしゃってくれました。
(妙案…?)
(食事前に見た鈴音さんの表情からして、妙案には間違いなそうだが、山本さんを合法的に処分する方法でも見付かったのか?)
(それとも……本家の力を使って、俺と鈴音さんを欧州や米国にでも逃亡させるのか!?)
(妙案と言うのだから、それに近い事だろう……)
俺は改めて鈴音さんを見るが、鈴音さんは険しい表情をしている訳でも無く、何時も通りの表情で有った。
本当に目まぐるしい展開で有る……
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