第210話 今後の対策!? その5

 鈴音さんと真理江さんが居間で話している間、俺は稀子の晩ご飯の手伝いをしている。

『こんな時間から料理を作るのか!?』と感じたが……実は料理の半分はもう出来ていた!?


りんちゃんと比叡君がデートに行って、私1人だったからね!」

「おばさんと居間に居ても、変な緊張をするし、自室に居ても暇だから!!」


 そんな理由で、稀子は早々カレーを仕込んでいたらしい。

 稀子の得意分野は揚げ物だが、カレー等の煮込み料理を鈴音さん以外が作ってはいけない等のルールは無い。

 カレーが大体完成した所で、真理江さんに警察から電話が来て、稀子もそれに付いて行った流れに成る。


「今晩はカツカレーとサラダだけど、変な験担ぎに成りそうだね。比叡君……」


 稀子は困った笑顔で言う。

 それは山本(孝明)さんに勝つの意味と、捉えて良いのだろうか?

 カレーはほぼ完成しているが、豚カツをまだ揚げてないのとサラダの用意も出来ていないので、俺がサラダを作って、稀子がカレーの最終調整をしつつ豚カツを揚げる流れに成った。


 お互いが晩ご飯の準備を進めていると……


「ふぅ~~」


 稀子が豚カツを揚げながら、ため息をつく。


「稀子も今日は疲れただろう……」


 稀子に労いの言葉を、俺は掛ける。


「確かに疲れたけど…、りんちゃんとおばさんの話は進んでいるのかな?」


「それは何とも言えないね。盗み聞きする訳には行かないし」


 俺はサラダのキュウリを切りながら言う。


「しばらくは山本さんも、鈴ちゃんや比叡君を襲えない筈だろうけど、本当に再度来たら恐いね」


「恐いどころでは無いよ。稀子!!」

「今の山本さんなら母親で有る、真理江さんも平気で殺しそうだ!?」

「それも…、笑いながら……」


「比叡君…。それ、完全にホラーの世界だよ……」

「歴史に残る事件になるよ……」


 それを聞いた稀子は、怯えた表情になりかける。


「一番の理想は自分のした過ちに、山本さんが気付けば良いのだけど……」


 俺は稀子にそう言う。


「余程、悔しかったんだね。比叡君に鈴ちゃんを盗られた事が……」


「それしか無いよな…。稀子」


「うん。それしかない!」

「鈴ちゃんも奥手の部分も有るけど、比叡君だけには積極的に成った!?」

「何故かは判らないけど……」


 稀子は揚がったばかりのカツを皿に乗せながら言う。

 カツももうすぐ揚げ終わるし、サラダもほぼ完成だ。


 鈴音さんがその様な行動を取ったのは『ささやかな仕返し』から始まっている。

 が超大事に発展するとは、当時の鈴音さんや俺も予測出来なかった。


 何時もだったら、直ぐに食べられる様に盛り付けに入るが、鈴音さんと真理江さんはまだ台所には姿を見せない。


「比叡君。片付けられる所は片付けようか!」

「カレーだけど、温かい方が美味しいから」


「そうするか…」


 盛り付けは2人の顔を見てから行う事にして、片付けられる物から片付けに入る。

 十数分で片付けは終わるが、まだ2人は台所に姿を見せない。


「カレーだから温め直せば平気だけど、豚カツが冷め過ぎるのはよろしくは無いな!」


 冷めていく豚カツを見ながら、稀子は言う。カツ類は揚げたてが一番美味しい。

 最終的にはカツカレーに成るのだから、冷めても構わないが、稀子も作ったプライドが有るのだろう。


「比叡君!」

「呼びに行くか『ご飯出来たよ~~』と!」


 俺も昼食以降、固形物は口にしていなかったから、こんな状態でもお腹は空いていた。


「そうしようか。稀子!」

「どんな話をしているかは判らないが、平行線だったら何時まで経っても晩ご飯に出来ない」


「よし!」

「じゃあ、2人で呼びに行こう」


 俺と稀子。

 真理江さんと鈴音さんが居る、居間に向かう。

 暖かい時期だけど、話を聞かれたくは無いのか戸は閉められていた。


 普段ならノックしないが、真剣な話をしている事は分かり切っていたので、俺はノックをする。


『コン、コン』


「晩ご飯の用意が出来ましたが……」


「鈴ちゃん。おばさん! ご飯だよ~~」 


 俺はノックをしながら用件を言い、稀子も言う。

 

「……はい」

「今から、向かいます」


 直ぐに部屋の中から、真理江さんが返事をする。話は済んだのだろうか?

 しばらくすると、真理江さんと鈴音さんが部屋から出て来る。


「大体話は纏まりましたので、食事をしながら話をしましょうか」


 真理江さんはそう言って、台所に向かう。

 俺は同時に鈴音さんの表情を見るが、何故か安心した様な表情をしていた?


(山本さん対策で、良いアイディアでも生まれたかな?)


 俺はそう感じながら、稀子と台所に戻った……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る